人手不足は「労働条件が酷い」会社の泣き言だ 移民受け入れの前に「賃上げ」を断行せよ

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「人手不足」を嘆く経営者は「甘えている」というアトキンソン氏。どういうことなのでしょうか(写真:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け、『新・観光立国論』『新・生産性立国論』など、日本を救う数々の提言を行ってきた彼が、ついにたどり着いた日本の生存戦略をまとめた『日本人の勝算』が刊行。週刊東洋経済では「デービッド・アトキンソンと考える日本の生存戦略」を特集した。
人口減少と高齢化という未曾有の危機を前に、日本人はどう戦えばいいのか。本連載では、アトキンソン氏の分析を紹介していく。

賃上げ圧力は高まりつつある

前回の「『永遠の賃上げ』が最強の経済政策である理由」では、日本経済復活のために賃上げがいかに重要かを説明しました。前回のコメント欄を見ていると、生産性についてはこの数年、かなり理解が進んでいるものの、生産性向上の目的は「賃上げ」だということに気づいていない方が多い印象を受けます。

『日本人の勝算』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

これまで日本が約30年にわたって苦しんできたデフレの主因は、規制緩和が悪用され、労働分配率が低下したことであり、逆に賃上げに方向転換させれば、日本も再び経済を成長させられるというのが、私の分析の結論でした。

賃上げは人口減少に伴って生じるさまざまな問題とも深く関わっています。

日本ではすでに人口減少が始まっており、労働市場の需給バランスが崩れ、供給側、すなわち労働者側に有利になってきています。その結果、賃上げの圧力がだんだんと強くなりつつあります。この傾向は大いに歓迎するべきものです。

人があふれていた時代は終わり、労働者は貴重な資源に変わりつつあります。今、日本は新しい技術を広く普及させ、生産性を高めて、高生産性・高所得の経済モデルにシフトする大きなチャンスを迎えているのです。

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