ゴーン逮捕で浮き彫りになる「日本の特殊性」 ゴーンと日産をめぐる7つの疑問

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21日に新たに逮捕されたカルロス・ゴーン氏(写真:REUTERS/Regis Duvignau/Reuters)

日産自動車のカルロス・ゴーン会長(当時)が東京地検特捜部によって逮捕されたのは11月19日午後。同氏を乗せたプライベートジェットが羽田空港に降り立った直後の出来事だった。メディアの関心は当初、脱税目的とみられる巨額報酬の過少申告に集中していたが、その後、事件は経営者個人による不正容疑をはるかに上回る深度を持っていることが明らかになった。

この事件には、企業統治(コーポレートガバナンス)、世界的な事業提携、国境をまたぐ政府と企業の関係、司法刑事制度、役員報酬、そして日本企業における外国籍経営者の役割をめぐる問題のすべてが絡んでいる。少なくとも日本の外から見て、ゴーン氏逮捕は日本発の経済ニュースとしては2018年でもっとも注目されたニュースとなった。

誰も不正に歯止めをかけられなかった

ゴーン氏の逮捕容疑は、日本が6月に導入した司法取引制度に応じ、日産の経営陣が特捜部と協力する中で固められていった。ゴーン氏は報酬の過少申告や支払い延期による税金逃れに加え、ベイルート、リオデジャネイロ、パリ、アムステルダムで私的に使用する邸宅を傘下のダミー会社に購入させていたほか、会社資金を不正に使って親族に報酬を支払っていたとされる。

特捜部は12月10日、2015年3月期までの5年間の報酬を有価証券報告書に約4400万ドル(約50億円)過少に記載した罪(金融商品取引法違反)でゴーン氏を起訴。特捜部は同日、2018年3月期までの3年間についても同様の犯行が行われていたとしてゴーン氏を再逮捕している。過少申告された報酬は8年間の合計で8000万ドルに上ったとされる。その後、特捜部は勾留延長を却下され、21日に特別背任容疑による3度目の逮捕に踏み切った。

経営陣の釈明によれば、ゴーン氏は日産トップに君臨していた20年間で絶対的な権力を握るようになったため、社内では誰1人として不正に歯止めをかけられなかったという。フランスのルノーは1999年、倒産の危機にあった日産に54億ドルを出資。再建請負人として送り込まれてきたのがゴーン氏だった。そして見事、日産を立て直したゴーン氏は、日産の救世主としてだけではなく、世界的なカリスマ経営者としてあがめられるようになっていく。

日本では同氏を主人公にしたマンガが登場するなど、国民的なヒーローになった。2004年には日産再生を通じて公共の利益に貢献したことが評価され、天皇陛下から「藍綬褒章」を賜ってもいる。外国人経営者としては初の受章だった。日本においてゴーン氏ほど全知全能と讃えられた外国籍経営者はいない。

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