かつて成功を手にした僕が苦しむ"男の問題" 「野ブタ。をプロデュース」から14年

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白岩玄さんが直面した「男性性」の問題とは?(撮影:山内信也)
今年9月に発売となった白岩玄さんの新刊『たてがみを捨てたライオンたち』が話題だ。既婚者、バツイチ、独身。立場の異なる3人の男性たちが、自らの意識の底に横たわる「男性性」の問題と真摯に向き合おうとする本作。
2018年は #Metoo が流行語大賞に選ばれるなど、日本社会における女性の生きづらさに注目の集まった1年だった。男性と女性とが社会で、あるいは家庭で、当たり前に対等で健全な関係を築くことは、いまだもって難しい。そんななか、白岩さんがこの本を通じて、男性の視点から描きたかったものとは何か。お話を伺った。

男性はいくつになってもどこかで張り合っている

――白岩さんは2004年に出版されたデビュー作『野ブタ。をプロデュース』がいきなりのヒットとなり、一躍人気作家となった。とある高校を舞台に描かれる『野ブタ〜』は、誰からも好かれ、いわゆるクラスのカースト上位男子である主人公の修二が、冴えないいじめられっ子の転校生、信太(通称・野ブタ)を、水面下で人気者へとプロデュースすることを思いつく。

白岩さん:自分の学生時代を振り返ると、男子って大体、誰がいちばん速く走れるか、誰がいちばん面白いか、誰がいちばんエロいことを言えるかというように、突出した才能を持ってることで周りから信頼される傾向があるんですよね。それを基準に自分のポジションが決まったり、グループができたりする。

もちろん、話をして気が合うから仲良くなるというのもあるにはあるんですが、結局のところ競争からは抜けられないというか、いくつになっても、どこかで張り合っている感じがするんです。

――『野ブタ〜』に登場する修二もまた、クラスの男子からある種の羨望の眼差しを向けられている。修二自身もそれに気がついているが、“自分は人気者の桐谷修二の着ぐるみを着ている、ハリボテの人気者、中身がない分落ちるのも速い”と、その状況をどこか俯瞰的に見てもいる。

一方で、当初は冴えないいじめられっ子だった信太は、修二の絶妙なプロデュースに加えて、持ち前の素直さや誠実さで、着実にクラスの人気を獲得していく。そんななか、2人の置かれる立場は徐々に逆転していく……。『野ブタ〜』は亀梨和也と山下智久のW主演で実写ドラマ化され、こちらもヒット作となった。

白岩さん:『野ブタ〜』を書いたのは21歳のときでした。運よく当たって、それなりのお金とか名声を手にしました。すると途端に生きやすくなったんですよね。自信もついて、いつも背中に追い風を受けているような気がして。周りからもおだててもらえますし。

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