金のため内縁妻の長男殺した69歳男の身勝手

相続トラブルが招いた残忍な「逆恨み」

「自分のもんじゃなくなる。どうでもいいや、という気持ちで傷つけました」

将来の不安から、Aさんへの悪感情も日々増大していた高橋被告。その感情を抑える糸が切れたのが、今年の正月だった。Bさんの生前には、毎年、2人が住む家を正月に訪ねていたというAさんが、今年は来なかったのだ。

「来る人が来ないと、しょぼんとしていましたね。それまで、寝る前に酒を飲みながらチラッと死ぬことを考えるくらいだった。1人で死ぬのは嫌だから、道連れにしようと葛藤はしていた。やれ、という自分と、やめろ、という自分が両方いた。でも自分は死ぬつもりでいたので、やれ、というほうが勝ちましたね」

そして今年2月、高橋被告はAさんの自宅前で、かつては『せがれ』とまで思っていたAさんを殺害した。

事件後も「逆恨み」続ける高橋被告

だが被害者のAさんにとって高橋被告は、自分の母親を奪い、両親を離婚に至らしめた張本人である。毎年、正月には高橋被告とBさんの住む家を家族で訪ねていたというが、実母であるBさんが亡くなってはじめて、複雑な思いを妻に明かしている。

【(Aさんの妻の調書)】
「市役所の手続きのために高橋が住む街に行きましたが、高橋のところへ顔は出しませんでした。これは夫の意向です。『おれは顔を合わせたくない。嫌いなんだ』と話していました。私はこの時はじめて、夫が高橋のことを嫌いなのだと知りました。Bさんと前の旦那さんとの離婚の理由は高橋との不倫。母を寝取った高橋のことを許していなかったのです」

高橋被告に相続権はなかったが、遺言書があればその限りではない。そして実はBさんの死後、遺言書が発見されている。だが、そこには家賃収入についての記載はなく「高橋被告は現在住んでいる家に住み続けてもよい」という趣旨のことのみが記されていた。

いずれにしても、高橋被告に家賃収入を得る権利はなかったのである。この遺言書の存在を、Aさんがすぐに高橋被告に話していれば、事件は免れることができていただろうか。Bさんの生前に財産の話し合いを一切せず、自分が事件を起こしたのは被害者のせいであるかのように述べる姿は、論告求刑で検察官が指摘した通り「逆恨み」以外の何者でもなかった。

後日、高橋被告には懲役15年の判決が言い渡された(求刑懲役18年)。裁判長は言い渡しの最後に、こう告げた。

「どうしたら、こういう事件を起こさずにすむことができたか、考えてほしい。『ああしてほしかった』ではなく、あなた自身、どこが悪かったか、考えてもらうことを私は希望しております」

閉廷後、うつむいて動かない高橋被告に裁判長の言葉は、どれくらい響いていたのだろうか。まだ、被害者を恨んでいるのだろうか。

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