文在寅大統領は「不通外交」を改めないのか 国際社会で孤立なら、北朝鮮も相手にしない

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9月の南北首脳会談以降、韓国の文在寅大統領(右)の「不通外交」が目立つ(写真:KCNA/ロイター)

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が目指す外交の姿が見えない。北朝鮮との関係改善に多くのエネルギーを注いでいることはよくわかるが、その一方で日本やアメリカなど北朝鮮問題に深く関わる国との外交にはあまり興味がないかのような振る舞いを続けている。そのことが北朝鮮問題の先行きをいっそう不透明にしているだけでなく、韓国にとって重要なはずの日韓関係や米韓関係までも不安定にしている。

南北関係の改善や朝鮮半島の統一は半島に住む人たちの悲願であり、文大統領が積極的に動くのは当然だろう。しかし、北朝鮮の核・ミサイル問題や人権問題は、もはや南北2国間の関係を超えて国際社会が直面している深刻な課題であり、その解決には国連や日米中をはじめとする関係各国の連携や協調が不可欠な状況となっている。

ところが文大統領の言動を見ると、これら関係国と十分に話し合わないまま独りで突っ走っている。その結果、キープレーヤーとの十分な対話がない外交、つまり文政権の「不通外交」の弊害が今、あちこちに噴出し始めている。

韓国の暴走を抑制しようとするアメリカ

「不通外交」を象徴するのが、11月下旬に米国との間に設けられた「米韓ワーキンググループ」だ。このワーキンググループは「文大統領が進める南北の平和体制構築の動きと、アメリカが進める北朝鮮の非核化の動きを同時並行で進めることを保証する」ために設けたとされている。わかりやすく言い換えれば、北朝鮮の非核化をめぐる米朝間協議が一向に進まない中で、韓国が北朝鮮との間で次々と合意を発表して前のめりになっていることを不満に思ったアメリカが、韓国の動きを抑えるために作った協議の場だ。

きっかけは9月に平壌で行われた南北首脳会談での「軍事合意書」だった。その内容は軍事境界線付近での軍事演習の中止や、飛行禁止区域の設定、非武装地帯に設置されている監視所の撤去など多岐にわたるとともに、国連軍や在韓米軍の活動が直接、影響を受ける内容だった。

韓国内では南北間の緊張緩和を進める画期的な内容であると、高く評価する向きもあった。そして日本政府関係者は、これだけ具体的で大胆な合意をするからには、事前にアメリカや国連との間で入念な調整が行われたとみていた。ところが韓国政府が合意内容をアメリカに伝えたのは首脳会談のわずか2日前だった。しかも、合意内容についての協議ではなく、ほとんど通告だったようだ。当然のことながら、アメリカは「韓国はいったい何を考えているのか」(ポンペオ国務長官)と激怒したという。

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