未完のまま終わる「平成」に込められた理念

「平らかに成る」ことができなかった30年間

来年1月2日の一般参賀が平成最後の一般参賀になる(写真:BrendanHunter/iStock)
度重なる自然災害、資本主義の行き詰まり、浅薄なナショナリズム――「平らかに成る」には程遠かった平成とは、一体どんな時代だったのか?
博覧強記の思想家・片山杜秀さんが、政治・経済・社会・文化を縦横無尽に論じ切った『平成精神史 天皇・災害・ナショナリズム』第一章の抜粋をお届けします。

「元号」で時代を論じる意味

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が2017(平成29)年6月16日に公布されました。第2条は「天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位するものとする」。その後、退位日は2019年4月30日と決まりました。世の中、何が起きるか分かりませんが、今のところ平成は31年で区切られると予測されます。西暦で言えば1989年から2019年まで。

と、終わりは予測できるのですけれど、平成の始まりは計画的に予定されていたとは言えません。1989年の始まりは言わば偶然ですね。昭和天皇の崩御によって昭和は終わり、平成が始まりました。人の生き死にで元号は変わるもの。これは原則として予定できません。人の寿命は神秘的なものですから。生きていると思ったら死ぬ。死ぬと思ったら生きている。元号は寿命に連れ、寿命は元号に連れ。国家の仕掛けとしてなかなか不思議です。

この仕掛けは一世一元の制と呼ばれます。天皇一世に元号ひとつですね。明治維新とともに仕掛けられました。しかも天皇の一世を天皇の崩御と一体化した。生前に位を退き、生きながら上皇になることは禁じ手とされた。明治政府の独創と言ってよいでしょう。と言うか、天皇が譲位する初めは7世紀の皇極天皇ですから、それより前のいにしえに戻ったと言うべきかもしれません。明治維新は王政復古。戻り先は古ければ古いほどよい。そして明治政府は元号も天皇一代にひとつと定めた。

そのこころは、天皇と国民の一体化をはかるとしか言いようがないですね。天皇の寿命で定められた時代を、すぐ終わるのか何十年も続くのか人間にははかりがたい神秘的時間を、元号とともに体験する。これが一世一元の元号マジックですよ。天皇と国民が、元号を通じて自ずと運命共同体の意識を持ち、ひとつの時代を生き、それが終わると、「ああ、明治が、大正が、昭和がなつかしい」と言って、天皇が好きとか嫌いとかを超えたところで、元号で時代の性質を回顧し把握しようとして、それがいつも何となく当たり前と思って、一生を終えてゆく。

明治っ子とか大正っ子とか昭和一桁とか、世代論も元号です。「昭和の戦争」とか言いましてね、戦争も元号です。「大正デモクラシー」とか言いましてね、民主主義も元号です。こんなに何でも元号で宜しいのでございましょうか。そのくらい元号尽くしでございます。

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