誰にも伝わらない残念な文章に共通する誤り

ポイントは物事の本質表す「抽象」と具体例

文章2のほうは、逆に、具体的説明ばかりで、抽象的な言葉がない。だから、いくら読んでも、結局何を言いたいのかわからない。

文章というのは、抽象と具体からできている。わかりやすく言えば、「抽象」というのは、物事の本質をズバリと捉えることだ。「具体」というのは、その本質的なことがどのように表れているかを捉えることだ。抽象的なことを書いただけでは、読み手に伝わらない。だから、具体的にそれを説明する必要がある。だが、逆に、具体的なことだけでも、読み手には、何を言いたいのか、わからない。

映画を思い浮かべてほしい。抽象というのは、遠景だ。全体はわかるが、細かいところはわからない。だから、遠景を撮っただけでは、何が起こっているのかわからない。映画の場合、カメラはだんだんと近づいて、もっとくわしく内容を撮っていくだろう。

だがまた、クローズアップだけでは、今どのような状況なのかがわからない。映画というのは、カメラが対象に近づいたり、遠ざかったりして、物語を説明し、登場人物の心を描いているのだ。

それと同じで、抽象的に書いてズバリと遠くから物事を捉え、それをもっと近くから具体的に説明していく必要があるのだ。このように、カメラが近づいたり遠ざかったりして、物語を説明するように、文章の場合は、抽象的に書いたり、具体的に書いたりして、事柄を説明していくわけだ。

文章に説得力が増す、基本テクニック

文章1は、抽象的なことばかりで、具体例がないためにわかりにくくなっているのだから、もう少し具体例を入れてわかりやすくすればよい。文章2は、逆に、具体的なことを書くばかりで、抽象的なことが示されないのだから、抽象的なまとめを加えるとよい。

修正例:文章1

「人間はもともと無秩序な状態にあった外界を意味付けて、秩序化している。たとえば、言葉を使って、ものや天気などの現象に名前をつけ、その原因を探ろうとしているわけだ。そうすることで、外の世界を理性的に捉えて、秩序付けている。しかし、これだけでは、外界は秩序化できるが、自分自身の混沌とした内面に向き合うことはできない。本当の自分は混沌としており、秩序付けられない欲望を抱いたり、わけのわからない恐怖を抱いたりする。秩序ばかりを考えていると、自分の無秩序な内面をしっかり見ることができなくなるわけだ。

修正例:文章2

私は川辺を歩いて、ごみの散乱に怒りを覚えた。川辺にはごみが落ちていた。紙くずがいくつかと、空き缶やビンだ。紙くずのほとんどは新聞紙か、広告のチラシだった。新聞紙はしわくちゃになって、風に飛ばされている。川に落ちているものもある。新聞紙のほとんどはスポーツ紙で、いかがわしい写真なども目につく。缶やビンは、割れて川の中で太陽の光に輝いている。」

このように、抽象的な内容を書いたら、必ず具体的に説明するのが、文章を書く上での鉄則だ。言い換えれば、抽象的なことは、話を先に進める役をする。そして、その内容をいったん振り返りながら説明するのが、具体的な内容だ。そして、それがあってこそ、文章に説得力が出る。具体的説明のない文章というのは、説得力のない文章だ。

そして、ここでも前章で説明した短文の二つの「型」が使える。つまり、初めに抽象的なことを語り、そのあとにそれを具体的に説明する形、または逆に、初めに具体的に書いて、そのあとで抽象的にまとめるわけだ。

そして、ほとんどの場合、初めに抽象的なことを言って、そのあとで具体的なことを付け加えるほうが書きやすい。そうすると、読んでいるほうも、そして書いている本人も、筋道をしっかりと追うことができる。先に具体的なことを言い始めると、その内容に引きずられて、無関係なことまで書き出して、何を言いたいのかわからない文章になってしまうことがある。

その点、先に抽象的にまとめておいて、そのあとでその説明をすると、自分でも言いたいことがはっきりしているので、ずれることがなくなる。

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