介護に疲れ67歳の母を絞殺した41歳娘の告白

「痛みのない世界へ連れて行きたかった」

実は事件直前、母親は要介護4の認定を受けた。そのため本来ならば翌月から訪問リハビリが可能になるはず。だが、これも被告にとっては肉体的負担や心理的負担を取り除くニュースではなかった。

「ケアマネさんが、こんなことができるようになると、いろいろな話をしてくださいましたが、ショートステイも弟が利用するのを嫌がっていたので……自宅で看たいと……。あと以前、福祉課で断られていたので期待してなかったです」

なぜ母親を手に掛けたのか

事件当日、母親と2人で夕食を食べた後のことを問われ、佐々木被告はやはり泣きながらこう語った。

「ご飯の後、自分のベッドに戻って『どっか痛い?』と聞くとやっぱり『足痛い』とか『腰痛い』とか言われる。だから私は一応さすってあげる……。20時くらいになり、急に母がいつも以上に足を痛がりはじめて、私はさすってあげてたんですが、今まで以上に『痛い、痛い』と……。一生懸命さすっていたら、一時は効いたみたいで和らいだのか静かになり、でもまたしばらくしてぶり返したのか、痛い痛いと……。私がさすろうとしたら『痛いから触らないで』と言われ、何もできなくなりました。こう言われたことは前にもあったんですけど、この日、いつも以上に顔が痛そうで……」

その結果「痛みのない世界へ連れて行きたい。介護から解放されたい」と母親に手を掛けた。ギリギリまで追いつめられた末の悲劇だった。

被告にはこの公判で懲役3年、執行猶予4年の判決が下された(求刑懲役5年)。執行猶予がついたのは、弁護側が「圧倒的なうつの影響で心神喪失にあった」と主張して、うつ病による心神耗弱が認められたことが大きい。

介護殺人については、事件が起きるたびに多くのメディアが高齢化社会の“負の側面”として報じてきたが、現在もその構図に変化はない。

厚生労働省「平成28年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」内にある『高齢者虐待の年度別虐待による死亡例の推移』は、毎年20数件と横ばい状態が続く。

対して同省が発表している「自殺の統計」によれば、介護や看病を理由にした自殺者数は毎年200を超える。事実、介護殺人の公判では被告のように殺害前後に自殺を試みている被告が多い。

家族同士の助け合いや苦労を美徳とする価値観がいまだ根強いなか、家族を殺す、もしくは自分で命を絶つことを考えるほど追いつめられた介護者に対する効果的な対策は講じられていないのが現状である。

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