介護に疲れ67歳の母を絞殺した41歳娘の告白

「痛みのない世界へ連れて行きたかった」

孤独な介護は介護者を追い詰めてしまうことに(写真:Ushico/PIXTA)  
すべての「家族」が仲良く、手を取り合って暮らせるわけではありません。中には親子やきょうだい同士で激しく憎しみ合い、争いの末、裁判や事件にまで発展してしまう家族もいます。本連載では、長年傍聴ライターとして活動し続ける高橋ユキが、裁判の傍聴を通じて「現代の家族が抱える問題」に焦点を当てます。

少しぽっちゃりした体型に紺色のポロシャツ、天然パーマ気味で白髪混じりのボブヘア。近所のスーパーで買い物でもしていそうな、どこにでもいる風貌だ。被告である彼女は2015年10月、介護疲れの果てに自分の母親(67歳=当時)の首を絞めて殺害した。

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「お母さんを、痛みのない世界へ連れて行きたかった。そして介護から解放されたいという気持ちがありました」

2016年9月のさいたま地裁301号法廷。法廷に佐々木由美被告(仮名、41歳=当時)のおえつ交じりの言葉が響く。公判で明かされたのは、その孤独な介護生活の末の決断だった。

「母がうつらうつらしているとき、ベッドの右側に立ち、首を両手で絞めました。……最初、向き合って絞めていたんですけど、疲れてしまって、ベッドにまたがって、同じように両手で首を絞めました。そのあと、お母さんの口から『くーっ』ていう声が、苦しいのか、空気が抜けるような感じで聞こえて、私の右手をつかむ感覚がありました。……それで、母が、抵抗してきたと思ったんですが、私はそのまま首を絞め続けました」

生きる気力を失った母親

被告の母親は「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」を患っていた。脊柱管には背骨、椎間板、関節、黄色靱帯などで囲まれた脊髄の神経が通る。これが背骨の変形や椎間板が膨らむことなどによって狭くなり、神経を圧迫する。下肢の痛みやしびれなどが主な症状だが、進行すると下肢の力が低下し、尿もれなどが起こる。

事件から2年前、母親はリハビリ中に腰を強く痛め要介護3となった。これを悲観し、母親は同年10月、手首を切り病院に搬送された。さらに事件前年の3月、自身で首も切ったという。

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