ゴーン氏vs特捜部、これからのシナリオは? 史上最も著名な外国人経営者をどう扱うのか

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2017年の株主総会での西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)とカルロス・ゴーン元会長。東京地検特捜部はゴーン氏という最も著名な外国人経営者をどう扱うのか(写真:日産自動車)

11月19日、日産自動車のカルロス・ゴーン会長が、自らの報酬を実際より少なく記載していた、有価証券報告書の虚偽記載容疑で東京地検特捜部に逮捕された。

ルノーが本社を置くフランスだけでなくアメリカでも、今回の逮捕に対し批判的な見方が出ていることが日本のメディアで報道されている。欧米からすれば、容疑者の取り調べに弁護士の立ち会いを認めない日本の検察の捜査手法は、人権侵害に映る可能性があるのだろう。

だが、より問題なのは「人質司法」と呼ばれる、容疑者の勾留期間の長さだ。検察が思い描くストーリー(筋書き)に従わないかぎり、容疑者は身柄の拘束が続く、この問題については、2017年に国連人権理事会に、特別報告者が問題視する報告をしている。

否認すると勾留が続く日本の刑事司法

日本の刑事裁判では、法廷での証言よりも、取り調べ段階での供述調書が何よりも重視される。密室での長期間かつ苛酷な取り調べから解放されたいがために、事実に反する内容であっても、調書に署名してしまえば、法廷で否認に転じてもまず通らない。

通常、警察が容疑者を逮捕した場合、逮捕から48時間以内に一応の捜査を終え、身柄を管轄の地方検察庁に送る。検察は24時間以内に捜査内容を吟味、裁判所に容疑者を勾留請求するかどうかを検討し結論を出す。特捜部が逮捕した場合、勾留請求期限は逮捕から48時間以内。勾留期間は10日間で、さらに10日間の延長請求が可能だ。

この間に検察官は起訴して容疑者を裁判にかけるか、起訴しない(不起訴)で釈放するかを検討する。不起訴には、証拠が足りないことなどが理由となる嫌疑不十分と、比較的軽い犯罪で被害者との間で示談が成立していることなどが理由となる起訴猶予がある。

特捜案件の容疑者は、起訴になる場合は基本的に逮捕から22日後に起訴され、「被疑者(=容疑者を指す法律用語)」から「被告人」になる。特捜案件に限らず、日本ではひとたび起訴されると有罪になる確率は99.9%。諸外国と比較すると、これが異常な高確率であることは、テレビドラマのタイトルにもなるほど有名だ。

過去の事例では、経済犯の場合、容疑を認めて供述調書に署名していると、起訴と同時か起訴から短期間で裁判所から保釈が認められる。裁判を経て実刑が確定すれば、その時点で刑務所に収監され、再び身柄の拘束を受ける。もし、執行猶予がついた場合は、その期間中に執行猶予を取り消されるような事態にならなければ、再び身柄の拘束を受けることはない。

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