東京五輪も争点となる台湾「住民投票」の行方 統一地方選で渦巻くポピュリズムとフェイク

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台湾の高雄市長選で善戦する国民党の韓国瑜候補(写真:ロイター/アフロ)

11月24日に行われる台湾の統一地方選挙が大混戦の様相を呈している。2014年の前回選挙で圧勝した蔡英文総統率いる民主進歩党(民進党)が苦戦を強いられており、早くも蔡総統の2020年の再選を危ぶむ声が出る。

今回の選挙が今までとは異なるのが、同日に実施される10件の住民投票だ。これまでも国政選挙に合わせて住民投票が行われたことはあったが、10件も乱立するのは初めて。過去の住民投票では「国際連合加盟」の是非や「対中政策」などがテーマだったが、いずれも投票率が成立条件の50%に満たず成立しなかった。

同性婚から大気汚染までテーマが乱立

ところが今回は住民投票が成立する可能性が高まっている。2017年に住民投票に関する法律が改正され、25%以上の投票率で賛成が過半数を超えれば成立することになったからだ。そもそも10件も住民投票が乱立することになったのも、法改正で住民投票実施に必要な署名数が有権者の5%(約94万人)から1.5%(約28万人)に大幅に緩和されたためだ。

野党の国民党や社会団体など、蔡政権に不満のあるグループがここぞとばかりに署名集めを展開した。署名に関しては、複数の提出案件で亡くなった人の名前が約1万人も含まれていたことが発覚し、投票業務を管轄する中央選挙委員会が刑事告訴を検討する騒ぎもあった。

住民投票にかけられたテーマは多様だ。10件のうち同性婚にかかわるテーマが5件を占める。ほかにエネルギー政策と環境について問うものが3件。

特に同性婚をめぐっては、論理的に相反する住民投票が同時に成立する可能性がある。推進案のひとつが「民法に同性婚の規定を盛り込むことに賛成か」と問い、反対案のひとつが「民法に婚姻は男女のものだと規定することに賛成か」と問う。現地では「どの案が何に賛成で反対かよくわからない」といった声も出ている。

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