池袋にひっそり建つ「小さな学園」の建築物語 自由学園明日館を360度カメラで探訪

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自由学園明日館は閑静な住宅街にある(撮影:尾形文繁)
東京23区だけでも無数にある、名建築の数々。それらを360度カメラで撮影し、建築の持つストーリーとともに紹介する本連載。第9回の今回は、豊島区にある「自由学園明日館」を訪れた。
なお、外部配信先でお読みの場合、360度画像を閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みいただきたい。

山手線池袋駅と目白駅の間の閑静な住宅街、その一画に「自由学園明日館」はある。

自由学園明日館は、近代建築を確立した三巨匠(フランク・ロイド・ライト、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエ)の1人であるフランク・ロイド・ライト氏とその弟子・遠藤新氏の作品であり、国の重要文化財にも指定されている。

芝生が美しい敷地には低層の建物が連なる。“プレーリーハウス”といわれるこのスタイルは、ライト氏建築の典型だ。ライト氏は地元であるアメリカ中西部の平原に、こうした作品を多く遺している。しかし、日本の東京・西池袋にそんな建築が実現し、築約100年を経て文化財となっているのは不思議なことにも思える。

帝国ホテル本館も設計した

ライト氏は、1916(大正5)年に東京・日比谷の帝国ホテルの建物を設計する仕事を引き受け、その後たびたび来日。その時期に、帝国ホテル本館(現在は愛知県の明治村に部分移築)のほか、灘の酒造家である山邑家の別邸(現・ヨドコウ迎賓館)、そしてこの自由学園明日館などを設計した。

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今の池袋は、ある種猥雑なイメージもある巨大ターミナルの街となっているが、大正から昭和初期にかけて、この付近は開明的、文化的な土地柄だった。

立教大学や成蹊学園といった私立学校、児童雑誌『赤い鳥』を刊行する出版社があり、画家たちが集まり住む長崎のアトリエ村、目白文化村という高級分譲住宅地も成立しつつあった。

当時、婦人運動の先駆者として活躍していた羽仁吉一、もと子夫妻は、この西池袋(当時は北豊島郡雑司ヶ谷)を拠点に出版などの活動を行っていたが、これからの時代の女性を教育する学校を作ろうと、友人でライト氏の弟子であった建築家・遠藤新氏を介して建物の設計を依頼。ライト氏は教育理念に共感し、設計を快諾した。

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