あの「モランボン楽団」超える美女楽団の正体 北朝鮮のソフト路線転換で主役に躍り出る

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今年2月の平昌五輪(韓国)終了後、北朝鮮に帰国する「三池淵(サムジヨン)管弦楽団」の面々(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射と核実験で、朝鮮半島の緊張が最高潮に高まった2017年。しかし、今年に入って相次いだトップ外交で、前年のような緊張状態は緩和した。

それに合わせて、「音楽」を重要な政治・宣伝活動とみなす、北朝鮮国内の楽団の動きにも変化が見られるようになった。その変化がどのような意味を持つかが、世界の北朝鮮ウオッチャーの関心事にもなっている。主役は、牡丹峰(モランボン)楽団青峰(チョンボン)楽団三池淵(サムジヨン)管弦楽団、そして功勲国家合唱団の動きだ。

日本でもマニアに人気の牡丹峰(モランボン)楽団

牡丹峰楽団はすでに日本国内でも一部のマニアが高い関心を持つ美女楽団だ。同楽団は2012年に金正恩委員長の肝入りで結成された。ほぼ女性のみの構成で、彼女たちはその美貌をボディ・コンシャスな軍服風の衣装に身を包み、美しい歌声と演奏技術を惜しみなく披露してきた。

団員たちはすべて北朝鮮国内の音楽エリート養成校である、金元均(キム・ウォンギュン)名称音楽綜合大学や金星学院を卒業している。そんな若い才能が結集した牡丹峰楽団のステージパフォーマンスは、公演を重ねるごとに進化。2016年5月に開催された朝鮮労働党第7回大会を祝う公演では、その集大成とも言える歌舞メドレー『我らは愛する』を披露、美しい歌声と海外ロックスター顔負けのエレキ楽器演奏、さらに韓流ガールズグループにも劣らない一糸乱れぬダンスが話題となった。2017年には北朝鮮国内ツアーを開催して7つの地方都市を巡り、北朝鮮音楽シーンにおいては不動の立場を獲得したかに見えた。

一方、牡丹峰楽団結成から遅れること3年、もうひとつの人気グループとなる、青峰楽団が結成された。同楽団は1980年代から活動している旺載山(ワンジェサン)芸術団内のユニットである。メンバーは旺載山芸術団や銀河水(ウナス)管弦楽団といった、北朝鮮のトップ楽団などで活躍したベテランアーティストが中心だ。バックバンドも牡丹峰楽団がエレキ楽器中心なのに対し、青峰楽団はアコースティック楽器中心でジャズに見られるビッグバンドに近い編成だ。牡丹峰楽団と青峰楽団、そして後述する功勲国家合唱団が、金正恩体制の中で3大人気グループとして、主要な国家行事を記念する公演などを中心に演奏活動を精力的に行ってきた。

次ページ平昌五輪に出たのは、三池淵(サムジヨン)管弦楽団
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