40歳で花開いた「物書き」の譲れない使命感

社会を動かす良質なジャーナリズムに徹する

1994年に渡米して以来、世界各国で活動している宮下洋一さん。現在はスペイン・バルセロナや南仏を拠点にしている(筆者撮影)  
これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむと古田雄介が神髄を紡ぐ連載の第46回。

欧米や日本などの安楽死を巡る現実を取材した第40回講談社ノンフィクション賞受賞作『安楽死を遂げるまで』(宮下洋一/小学館/2017年)には、こんなくだりがある。アメリカで配車サービス・ウーバーを利用して取材先に向かう場面だ。

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「『退職後の暇つぶしで始めたんだけどね、稼ぎが良いなんてもんじゃないさ。これで、週に2500~3000ドル(約28万~34万円)の儲けだぜ』

退職後の暇つぶしで、私の平均月収に近い金額を、わずか1週間で稼ぐウーバーの力に圧倒された。あれこれ考えているうちに目的地に着いた。(P169)」

いつかどこかで話してみたいと思っていた

著者の宮下洋一さん(42歳)はアメリカの大学に入学して以来、四半世紀もの間にわたって海外を拠点に活動しているジャーナリストだ。日本語と英語、フランス語、スペイン語、カタラン語、ポルトガル語を操り、世界中の現場を取材対象としている。

これまでもフランス外人部隊を取材した『外人部隊の日本兵 たった一人の挑戦』(並木書房/2006年)や、第21回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した『卵子探しています 世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて』(小学館/2015年)など、話題作を世に送り出してきた。

その気鋭のジャーナリストがさらりと触れた描写のなかに、リアルな生活規模と収入以上に大切にしている何かを感じた気がした。

ツイッターで連絡先を知り、その思いを伝えてインタビューを打診したところ、まもなくして、「海外生活で長年ジャーナリストという職業をしながら悩み続け、うまくいかない年月を過ごしてきたことなど、いつかどこかで話してみたいなとも思っていました」と嬉しい返信が届いた。

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