ロームが自動車業界で引っ張りだこな理由 EV時代の必需品、「SiC半導体」って何だ?

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大きな変革期を迎える自動車業界の新主役とは?(デザイン:熊谷 直美、撮影:尾形文繁)
100年に1度と言われる自動車業界の変革期において、完成車メーカーを頂点とした従来の秩序が変容しつつある。11月19日発売の『週刊東洋経済』は「クルマの新主役 ―沸き立つ電子部品、半導体、素材―」を特集している。
勢いづくサプライヤーの中で注目されているのが、半導体メーカーのロームが手掛ける、次世代のパワー半導体材料「SiC(炭化ケイ素)」だ。電力損失を抑える役割を果たし、電池を搭載するEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)の燃費向上に役立つことが期待されている。2025年の市場規模は、最大で18年比7倍の約35億ドルになるという推計もある。製造を担当する東克己専務取締役に、SiCの可能性について聞いた。

欧州メーカーからの商談の機会も増えている

――SiCに関する引き合いは、現状どれぐらいあるのでしょうか。

自動車メーカーからの需要は非常に堅調だ。PCやタブレット、太陽光パネルのようなバブル的なものとは違う印象がある。これまでロームの車載向け製品は、インフォテイメント系の売り上げがいちばん高かった。だが、EVの登場によって、SiCを中心に考える自動車メーカーが増えてきている。

『週刊東洋経済』11月5日発売号(11月10日号)の特集は「クルマの新主役」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

具体的にはここ数年、今までお付き合いがなかった欧州の大手自動車メーカーから商談の機会をもらうことが増えた。彼らはSiC製品を導入するだけでは、十分にその性能を引き出せない。周辺部品の調整をわれわれが行う必要があるからだ。そこでわれわれはティア1(一次請け)に単に製品を販売するだけではなく、ティア1と共同で完成車メーカー向けにカスタマイズを行っている。

SiCはロームにとって上野動物園のパンダのような役割を果たす。「パンダを見に来るついでに、ゾウやキリンも見る」というように、SiCを持っていることが他の車載製品に対する引き合いにつながっている。「次世代の量産車でロームのSiCを使用したい。その前に既存のシリコン製品でロームの品質をチェックしたい」という顧客も多い。

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