「トランプ勝利」でも株の反発は長続きしない 今回はITバブル崩壊やリーマンと何が違うか

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ホワイトハウスで子どもにお菓子を配るトランプ大統領。中間選挙で勝ったら株は反発するかもしれない。だが筆者は「反発は長続きしない」という(写真:Abaca/アフロ)

アメリカ株が大きく調整している。11月6日に行われる中間選挙終盤戦での、この下げ。選挙への影響を探っている最中に、シカゴにいる私のもとにも、日本から「来年度、公約どおり消費増税を断行する」という話が聞こえてきた。ただしいつもの注釈付きらしい。「リーマンショックのようなことがあれば、増税は回避される」とのことだ。ならば先に言っておきたい。リーマンショックは起きない。

そもそも、アメリカではリーマンショックは結果的にプレゼントになった。ただあまりにも不条理だった。つまり、間違いを犯した人たちを真っ先に救い(金融分野)、普通の人々が取り残された。この時アメリカは、金持ちには社会主義的救済を、労働者にはグローバリゼーションの市場原理を浴びせた。だからドナルド・トランプ大統領が生まれてしまったのだが、今もその時に生み出された膨大なマネーは市場を覆っている。今は、株式市場はお金が足りない状態ではない。だから起こるとしたらリーマンショックではなく、国家としてのアメリカのメルトダウン(溶融)だ。

アメリカがメルトダウンする前に、中間選挙結果次第で株は一時的に戻すことも可能だ。苦戦が予想されている共和党が下院で過半数を維持できれば、瞬間的にはかなりの上昇が見込める。その可能性は、前回のコラム「米選挙、民主党が買ったら株価は暴落するか」の寄稿時(10月18日)より高まっている(共和党が下院で勝つ確率は30%程度か)。

ただし、それでも株高は長続きしないだろう。理由は2つある。まずその時は再び長期金利が上がる。前回の記事で、今回の下げが2月のようなボラティリティ(変動率)の要因ではなく、本当に長期金利の上昇を理由にするなら、本格的な下げを覚悟するしかない、としたのを思い出してほしい。そしてもう1つの理由は「アメリカの2極化」だ。こちらは、中間選挙がどんな結果になっても悪化するだけだ。

冒頭から読者を脅かしてしまったかもしれないが、現状を理解するため、過去の株の大幅下落のパターンを検証してみよう。

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