日立vsアルストム「イタリア電車対決」の軍配 愛称「ロック」と「ポップ」並んで同時デビュー

拡大
縮小
イノトランス会場に並んだロック(左)とポップ(右)。まったく異なる外見の両車だが、どちらもイタリアの近郊輸送を担う(筆者撮影)

今年2018年の国際鉄道見本市・イノトランス屋外展示場に、同じカラーリングの2本の列車が並んだ。その名は「ロック」と「ポップ」……音楽の話ではない。イタリア鉄道旅客部門、トレニタリア(Trenitalia)の新しい近郊電車の愛称である。

東洋経済オンライン「鉄道最前線」は、鉄道にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

トレニタリアは、近郊列車に音楽にまつわる愛称を付けているものが多く、少し前には「ジャズ」や「ミヌエット」といった名前もあった。ロックとは、日立が受注した大都市近郊用2階建て電車で、日立としての製品名は「カラバッジョ」。一方のポップは、アルストムが受注した地方ローカル線および都市近郊用電車で、こちらも「コラディア・ストリーム」という製品名がある。

使用する予定の地域や用途はもちろん、運行路線も異なる両車だが、同じ運行会社の車両でありつつ、同時期に別のメーカーが造った車両が隣同士に展示されるのは少々珍しい。そんな両車にはどんな特徴や違いがあるのか、さまざまな視点から比較してみた。

メーカー主導の欧州鉄道車両

両車は運行会社トレニタリアの塗装こそ同じだが、性能やデザインに一切の共通点はない。これは車両の調達方法が理由だ。かつては鉄道会社が主体となって車両の開発を行うか、あるいはメーカーと共同で開発していたが、現在はメーカー側が性能やデザインを鉄道会社へ提案し、その中から鉄道側の条件と合致したメーカーと契約を結ぶコンペティション形式へ変わってきたからだ。

つまり、トレニタリアの希望した2階建て通勤・近郊型車両を日立が、郊外を走る近郊型車両をアルストムがそれぞれ受注したわけだ。これらの車両は、コーポレートカラーとなる外装以外、デザインや性能はすべてメーカー側が決めている。

日本も状況は同じで、かつては鉄道会社主体で車両開発が行われ、各社それぞれの特徴が表れていたが、近年はメーカーによって車体構造や性能がほぼ共通化され、前面など鉄道会社の「顔」となる部分だけ独自のデザインとする方法へ変わりつつある。欧州の場合はさらに一歩進んで、塗装以外のデザインはまったく同じ、まるで量産される自家用車のようだ。

次ページ「新車」はメーカー各社の提案から選ぶ
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT