サウジ「密室での惨事」に残るこれだけのナゾ それでも事件はアメリカ主導で収束に向かう

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サウジアラビア政府に反旗を翻したジャーナリストのカショギ氏。本当に在トルコのサウジアラビア総領事館で殺害されたのか(提供:Middle East Monitor/ロイター/アフロ)

密室での暗殺疑惑は本当だったのか――。

サウジアラビアと同国のムハンマド皇太子に対し、『ワシントンポスト』紙などアメリカの有力紙で厳しく批判していたサウジアラビア国籍のジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が10月2日、トルコのイスタンブールにあるサウジアラビア総領事館を訪れた後、行方不明になった。今も事の真相は不明だ。

この事件はカショギ氏の動向を尾行などで把握していたと思われるトルコ当局によってリークされたとされる。カショギ氏は、サウジアラビアのムハンマド皇太子が派遣した15人の暗殺部隊によって殺害され、その後バラバラに切断された遺体はトルコの総領事館から運ばれ、部隊が利用したプライベートジェット機でサウジアラビアに送られたというものだ。

IT機器が録音した”動かぬ証拠”

これによって、女性の運転解禁などムハンマド皇太子が進める「リベラル」なサウジアラビアの改革・開放路線が今まで世界に好感を与えていたが、そのベクトルは180度変わってしまった。サウジアラビアとムハンマド皇太子の威信は失墜。事件直後にはサウジアラビア関連の株価が下落し、同国と共同投資を表明してきた日本のソフトバンク株も急落した。

ムハンマド皇太子は2017年11月、「腐敗撲滅」を名目に掲げて、多数の王族を首都リヤドにある高級ホテルのリッツ・カールトンに監禁し財産を国庫に返納させるなど、従来のサウジアラビアでは考えられない強硬な手段をとってきた。王族には深い恨みを残したものの、その反面、リスクをいとわない大胆な改革・開放政策がとれる指導者として、国内の若年層から支持を受けていた。ところが、今回の殺害事件は、国際社会の常識ではとても許容されないレベルの事件となった。

トルコ政府はサウジアラビア総領事館内を音声と映像で盗聴していると考えられ、音声と映像という動かぬ証拠を握っていたと推測される。仮にこれを公表すれば、「サウジが潰れるか、トルコが潰れるか」という事態まで発展しかねかった。

その前に、第一の疑問として、なぜカショギ氏はわざわざ、敵対するサウジアラビア総領事館に自ら行ったのか。

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