トランプ大統領が増幅した金融市場の変動性 米中経済大国の衝突が破壊する長すぎた安定

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トランプ大統領は「FRBは狂っている」と非難。しかし、パウエルFRB議長は利上げを着実に続ける構えだ(写真:REUTERS/Al Drago)

前日のニューヨーク市場に続き、11日の東京市場で4%近く下げた株安のきっかけは、10月に入って3.0%から3.2%超まで、急ピッチでアメリカの長期金利が上昇したことだ。当面の注目は、日本時間で11日夜に発表されるアメリカの9月のCPI(消費者物価指数)。市場のコンセンサス予想は前年比2.3%だ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは「CPIが予想を超えてくれば、長期金利がさらに上昇するとの見通しから株価はさらに下げる展開になる。逆に下回れば、不安心理は後退し、株価は戻していくだろう」と話す。

同国のドナルド・トランプ大統領は10日の株式の大幅下落について、「FRB(連邦準備制度理事会)は狂った。引き締めすぎだ」と牽制した。だが、FRBのジェローム・パウエル議長の立場からすると、潜在成長率を上回る状況にもかかわらず、トランプ大統領が大型減税や財政刺激策を打ち出し、インフレリスクを高めたからこそ、金利の引き上げ続けなければならない、と反論したいところだろう。

経済が好調なら長期金利は上昇して当然だが

トランプ氏もパウエル氏も、アメリカ経済について強気なことに変わりはない。FRBの見通しでは、2018年の米国の実質GDP(国内総生産)成長率は3.1%、失業率は3.7%と絶好調。インフレ率はPCE(個人消費支出に関する)インフレ率で2.1%の見通しだ。金利を上げなければバブルが膨らむリスクがある。金利を上げても、2019年の実質成長率は2.5%にスローダウンする程度で、インフレ率は2.1%を維持できるというのがFRBの見立てだ。

パウエル議長は10月3日、それまでゴールと思われていた3%の政策金利をさらに引き上げる可能性に言及し、金融市場は動揺した。政策金利は12月にも0.25%ポイント引き上げられ、今年末には2.25~2.50%になると予想されるが、2019年も4回の利上げを行って同年末には3.5%に達する可能性が出てきた。

アメリカを中心に世界経済が緩やかに拡大し、金利は低いまま、という「ゴルディロックス(適温経済)」がどこまで持続可能かについて、市場に危機感がないわけではない。だからこそ、今年2月と同様、今回も長期金利の上昇に株式市場が反応した。ただ、金利が低すぎると、少しでも高いリターンを求めて株式投資、不動産投資が活発になった。投資適格の下限であるトリプルB格の債券発行も拡大してきた。

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