逆境から大逆転、ダイキン救った専業の執念

事業撤退の危機をどう乗り越えたのか?

空調生産本部 小型RA商品グループリーダー
主任技師
岡本高宏

当時の開発チームのメンバーで、現在は空調生産本部の主任技師を務める岡本高宏氏は「冷暖房両用のエアコンが主流になる中で、『乾燥』という暖房の課題をどう克服し湿度をコントロールするか。そこで現場がひねり出したのが、『無給水加湿』という技術だったのです」と話す。

部屋の中ではなく、部屋の外に着目、屋外の空気の中に含まれる水分を室外機で集め、それをヒーターで加熱し、部屋の中へ移動させるという仕組みを考え出した。

「もともと除湿器には、水分をローターという吸着材に集めて除湿するデシカントという仕組みがありました。それを逆に考え、加湿の発想に変えたのです。無給水加湿という独自技術を成立させるのが最初の課題となりましたが、どう工夫すれば必要な加湿量を確保できるのか。困難を極めました」(岡本氏)

空調専業メーカーとして長年の実績があるダイキンにとっても、これまでにない新しいエアコンをつくるという前人未到のチャレンジだから当然だ。だが、開発が始まって3カ月後には、成功の糸口が見え始める。

試作品の試運転時に吹き出し口の湿度を測ると、わずかでも確実に加湿できていることがわかったのだ。「私たちのやり方は間違っていない」、そう確信した瞬間だったという。そこから急ピッチで開発が進められ、当初の予定どおり10カ月で発売にこぎつけた。

シロッコファンが水分子を含んだ空気を集め、吸い込まれた空気からデシカント(乾燥材)が水分子だけを集めて室内機に送る

社運のかかった製品だ。もちろん、性能だけでなく、ネーミングにも工夫がなされた。これまでのエアコンとまったく異なる機能、湿度コントロールにこだわったことを表す名前――そこで生まれたのが「うるるとさらら」だ。うるるは加湿、さららは除湿を意味している。冬は乾燥、夏は多湿という日本で快適に過ごすには、湿度調整が大切であることを消費者に訴えたいという思いもあった。

全社一丸となって売り出した「後の看板商品」

村井氏が語る。「『うるさら』には、空調専業メーカーとしてのプライドをかけ、すべての部門が一致団結して取り組みました。このままではダイキンのルームエアコンはなくなってしまう、なんとしても成功させたい。そんな思いが危機をチャンスに変えたのだと思います」。

「うるさら」は、今年で発売19年目を迎える。今シーズンの新製品「うるさら7(Rシリーズ)」では湿度コントロール技術をさらに向上したうえで、ユーザー好みの温熱環境を学習するAIを搭載。これまで冷房時の室内の熱が少ない環境下では、室温を下げずに電気代を抑えた除湿がしにくかったが、従来の2倍の除湿量を実現するなど一層「湿度」にこだわった製品となっている。

特に近年は、高気密高断熱の住宅が増えていて外気の影響を受けにくくなっている。エアコン使用時、夏であれば温度が上がりにくく涼しさを保てる、冬は温度が下がりにくく、暖かさを保てるようになっている。ただ、空気中の水分量(絶対湿度)は変わらないため、そのままだと夏は湿度が高く、冬は湿度が低くなってしまう。

だから、湿度コントロールの必要性が高まっているという。中でも、今年の記録的な猛暑は記憶に新しいところ。高温多湿を極める日本の夏、体調維持や快適な日常生活のためにも、エアコンは必要不可欠だった。もはやエアコンは、ライフラインになったと言っても過言ではないのだ。

「最新の技術を活用して、どう快適な空気・空間を実現できるのか。快適な状態は、こんな空気だとダイキンが答えを出したい。今後も湿度コントロールを追究し、試行錯誤を繰り返しながら磨きをかけて、その答えの本質に迫っていきたいと考えています」(岡本氏)

空調の4要素は「温度・湿度・空気清浄・気流」だ。この4要素をすべてコントロールできなければ快適な環境はつくれない。だから、湿度コントロールまでやってのけるのが空調専業メーカーの使命、というのがダイキンの答えなのだろう。ダイキンの最大の危機を救った「無給水加湿」に続く、新たな技術に今後も期待したい。

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