「ブロックチェーン信仰」が揺らぎ始めた理由 金融は「電子化・集中化・規制強化」に向かう

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今後の決済インフラをはじめとした金融の方向は大きな“3つの潮流”に転換されようとしている(写真:metamorworks/iStock)  
今「決済インフラ」が、かつてない大きな変革の時期を迎えている。フィンテックの流行は峠を越し、技術はある程度浸透したと言える。銀行をはじめとした金融機関の経営環境も回復の兆しが見えてこない。
このような状況で、新しい近未来の決済インフラの姿が見えつつある。現在、決済インフラの分野で進行している大きな“3つの潮流”とは何か。近著『決済インフラ入門〔2020年版〕』を上梓した宿輪純一氏が、銀行誕生以来の大変革とも言うべき問題について解説する。

またも起きた暗号資産流出事件

すでに慣れてしまった感もあるが、つい先日、今年9月に暗号資産(もう仮想通貨とはいわない)交換サイト「Zaif(ザイフ)」を運営するテックビューロは不正アクセスにより流出した暗号資産の総額が約70億円と発表した。暗号資産の流出については、以前にも今年の1月にコインチェックの590億円の流出事件をはじめ、いくつも起きているせいか、70億円で驚く向きも少ないように感じられる。

『決済インフラ入門〔2020年版〕』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

しかし、これは金額のみならず、それ以上に意味を持つ“重大な事件”なのである。金融庁が2回も検査が入り、2回も行政処分を出した後に起きた事件だからである。今回の事件で3回目の行政処分となっている。「すべてにおいて不十分だった」と金融庁がコメントを出したが、これには恐れ入った。

この「すべてにおいて不十分だった」という言葉は、大変重要な意味を持つ。今までの検査(仕事)の意味がなかったということだからである。金融庁がこの自己否定的な発言をあえて出した「本当の意味」が筆者もわからない。幹部が”総”入れ替えしたのも理由のひとつかもしれない。

また、これが暗号資産交換業者でなく、たとえば銀行の場合では対処はもっときつくなり、営業停止以上に相当すると考える人は多いのではないか。もちろんテックビューロは営業停止の処分は受けていない。

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