トヨタ「世紀の提携」の先に抱える大きな難題 次世代のカギ「MaaS」に販社をどう組み込むか

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MaaSというサービスを実行するために、販社への取り組みをどのようにクリアしていくのか(東洋経済オンライン編集部撮影)

ソフトバンクとトヨタ自動車の提携に関する電撃会見から2日後。東京・お台場で開催された「東京モーターフェス2018」(10月6~8日)のイベントで、トヨタ自動車の豊田章男社長、ソフトバンクグループの孫正義社長、そしてタレントのマツコ・デラックスさんの3人によるスペシャルトークショーが実現した。

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事前に印刷された場内パンフレットに孫氏の名前は記載されておらず、観客にとってはサプライズとなった。

豊田氏は大会主催者である日本自動車工業会の会長として孫氏を出迎える立場であり、マツコ・デラックスさんも孫氏のひととなりについて語るなど、大会主催者側がスペシャルゲストに対してかなり気を遣っている様子がうかがえた。また対談中、豊田氏も孫氏もCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)といった技術論についてはほとんど触れず、両社の企業理念や若い世代に向けてのメッセージを中心に語っていた。

筆者はこのイベントに日本ジャーナリスト協会会員の立場で参画し、各社の最新車同乗試乗会のドライバーや、18歳以下に市販スポーツカーを運転してもらうイベントのインストラクターなどを務めた。この若い世代の人たちとの交流や、豊田氏や孫氏がトークショーで語った内容などを踏まえて、自動車産業の未来について改めて深く考えた。

「MaaS」は企業経営者に都合のいいフレーズ

豊田社長は近年、同社の記者会見や各種イベントで、またメディアの取材を受ける際、「100年に一度の大変革」というフレーズをよく使う。

その背景には、独ダイムラーが2016年頃から採用しているマーケティング用語「CASE」による先進技術と次世代型サービスの融合がある。

そうした次世代型サービスは、一般的にMaaS(マーズ:モビリティ・アズ・ア・サービス)と呼ばれる。

このMaaSという言葉に定義はなく、豊田氏や孫氏のような企業経営者、また大学教授などの有識者やコンサルタント企業のアナリストなど、人によってMaaSの解釈は大きく違う。逆の見方をすると、MaaSは企業経営者にとっては実に都合のいいフレーズだ。経営戦略の中での難題をMaaSになぞらえ、大規模な組織再編や業界再編を行うことができるからだ。

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