真夏は40℃超え…愛知・某工場の空調事情 記録的猛暑を乗り切った立役者とは?

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記録的猛暑となった2018年の夏。家庭ではエアコンをフル稼働させた一方、大空間では自分の体感温度に合わせて室温調節ができず、エアコンの効きが弱いと感じたり、暑くてどうにも我慢できないといった経験をした人も多いのでは。愛知県のとあるメーカーでは工場に最新の空調設備を導入し、労働環境を飛躍的に改善したという。酷暑の中でも、生産性と従業員のモチベーションを保持できる労働環境の秘訣を探ってみた。


 名古屋で歴代1位となる最高気温40.3℃が観測された(気象庁発表)今年の夏。従業員の健康管理に苦慮した工場も多いのではないだろうか。というのも、工場は1フロアが大空間のため、一般的にビルやオフィスと比べても空調管理が難しいとされている。

こうした工場ならではの課題に取り組み成果を上げているのが、自動車部品メーカー・中庸スプリングだ。高度な熱処理技術と金型加工技術に定評があり、愛知県碧南市と名古屋市、タイの3カ所に工場を保有。実に4500種類以上の自動車部品を製造している。中でも碧南工場では、夏場の室温管理が急務となっていた。

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同社製造部 第2工場課長の髙木覚士氏は、その理由をこう語る。「ここでは900〜950℃の熱処理を行うため、炉を断熱材で囲っても、その周囲は40℃を超えてしまう。炉からの放熱に加えて製品自体も熱を持つため、工場全体の室温は35℃ほどまで上昇します。夏には40℃を超えることもありました」。

全体空調に加えて工場内の熱を効率よく逃す方法も模索していたものの、限界がある。そこで今年7月に導入されたのが、最新型工場用エアコン「マルチキューブ」だ。

マルチキューブの最大の特長は、「一人1台」使えること。自分の体感に合わせて温度や風量をリモコンで制御できるのだ。オンオフの切り替えも、もちろん1台ごとにできる。

中庸スプリング株式会社 製造部 第2工場課長
髙木覚士

「以前も2〜3人に1台ずつスポットエアコンを設置していましたが、風量が少ない、風が生ぬるい、などの声がありました。そこで2018年7月、熱処理にかかわる製造ラインを中心に一人1台、合計30台のマルチキューブを導入したのです。

涼しさを感じるには温度に加えて風の強さもポイントになりますが、マルチキューブは吹き出し口の口径が250mmと大きい。冷風がたっぷり出てくるため全員がしっかり涼しさを実感できることも大きな魅力です」(髙木氏)

自分の体感温度に合わせて調節、体調管理にも一役

マルチキューブは本体のコンパクトさも魅力の一つ。大人数が働く工場に数多く導入しても圧迫感がない。また増設も簡単に行え、従業員の入れ替わりやレイアウト変更といった職場環境の変化に自在に対応できる。

温度調節やオンオフを、一人ひとりの体感温度に沿って調節できる。小回りが利くのはマルチキューブの第一の特長だ

部品を仕上げる工程を担当する男性従業員にマルチキューブの使用感を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「ここは室温が40℃近くなることもあるのですが、マルチキューブは涼しい風がたくさん出るため快適ですね。温度や風量、オンオフも自分でコントロールできるので、夏場もしっかり体調管理できました」

また製品検査を担当する女性従業員は、マルチキューブの導入で「仕事のモチベーションが上がった」と話してくれた。

労働環境の改善は、従業員のモチベーションアップにも直結する

「2〜3人に1台で風を送るエアコンでは、吹き出し口から遠い人には風が届かないこともありました。また担当する作業内容などによって体感温度が大きく異なるため、自分は寒くても隣の人は暑がっているというような場面も多々あり不便でした。マルチキューブなら涼しさをしっかり感じられますし、自分の体感に合わせて調節できるので、本当に助かります。労働環境が整って、とても働きやすくなりました」

製造業大国ニッポン。多種多様な工場現場で、夏場の熱中症対策が課題とされる。しかしこの工場では、今年の猛暑の中でも働きやすい環境を維持し、熱中症を防ぐことができたという。

快適な労働環境は、人材確保にも有効だ

同部 第2工場・第4工場 次長の木村明人氏は、「工場では何よりも安全が第一」と述べ、環境整備の重要性を強調する。

同部 第2工場・第4工場 次長
木村明人

「当社では、作業環境の整備も安全対策の一つととらえています。『従業員は家族のような存在。皆の負担を減らしたい』というのが社長の強い思い。『工場の室温30℃』を目指し、マルチキューブに代表されるような各種対策を行ってきました。私も現場を牽引する立場として、できるだけ働きやすい環境を作っていきたいですね」(木村氏)

今、あらゆる業種で若い世代の人材確保が課題となっているが、製造業でもその傾向は強い。中でもメーカーの工場がひしめく愛知県では、人材確保が大きな課題だという。そんな中で、同社の「安全で働きやすい環境を」という思いは、従業員にも届いている。

「当社は正社員の定着率が高いのですが、最近では期間従業員のリピート(期間終了後に再度従業すること)率も高くなっています。働きやすさを実感してもらっている証しで、とてもうれしいですね」(木村氏)。地元の高校生インターンシップも、今年は1校から2校に増加。若い世代も快適さを実感しているようだ。

マルチキューブ本体は、1辺約50㎝の小型形状。ここから涼しい風を白いホース状の管(ダクト)で、従業員一人ひとりに供給している

こうして中庸スプリングの労働環境を支える「マルチキューブ」は、空調専業メーカー・ダイキンが、労働環境向上をバックアップしようと開発した最新の高機能エアコン。同社が長い歴史の中で培ってきたノウハウと技術力を結集して実現したものだ。

2018年1月の発売開始以来、販売台数は早くも2,000台を突破。物流倉庫やショッピングセンター、室温が上がりやすい飲食店の厨房、駅など、空調管理が難しいとされる場所で活用され始めている。

従業員の安全を守りながらモチベーションアップと生産性向上を狙うには、「働きやすい環境づくり」が必須だ。一方、工場にまで高機能エアコンを導入している企業はまだ少ない。夏の暑さが年々激しさを増す中、企業が競争に勝ち生き残る鍵は、ここに隠されているのかもしれない。

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