安倍政権を断じて「保守と呼べない」根本理由 80年代を境に「別物」になった戦後の保守論壇

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安倍首相は自らのことを保守だと強調しているが、革新政権と呼んだほうがふさわしい。その理由とは?(写真:共同通信)  
安倍政権が憲政史上、最長の政権となる可能性が濃厚になってきた。「保守」を自称する安倍政権だが、はたして、それは本当なのか。あるいは、歴史修正主義や排外主義的な記事を粗製乱造する雑誌。あれは「保守」系論壇誌なのか。
「本来の保守とは何か」を問う、政治学者・中島岳志氏の著書『保守と大東亜戦争』が話題を呼んでいる。このベストセラーをもとに、戦前と平成の終わりの日本を比較しながら、議論した。

安倍政権は革新政権である

――第二次安倍内閣は異例の長期政権となりました。この間、安倍政権は一般に保守政権と見られ、安倍首相も自らのことを保守だと強調してきました。しかし、中島さんはこの見方に異議を唱えています。

中島:安倍政権は、保守ではなく、革新政権と呼んだほうがふさわしいのではないでしょうか。

本来の保守主義の人間観と安倍首相の人間観の違いを考えると、そう言わざるをえないのです。保守主義の系譜をたどると、イギリスの思想家エドマンド・バークがフランス革命を批判したことにさかのぼることができます。フランス革命は、人間は理性によってユートピア社会を作り上げることができるという思想に基づいていましたが、バークはこの考えを危険視しました。

人間は道徳的にも能力的にも不完全な存在です。どんなに優秀な人でも間違いを犯し、誤認を繰り返しますし、嫉妬やエゴイズムからも自由ではいられません。実際、フランス革命は惨憺たる状況を生みました。

このように、本来の保守主義は人間の理性に対して懐疑的な見方をするのです。しかし、安倍首相にはこの懐疑主義的な姿勢がありません。国会での振る舞いを見ても、野党の質問に答えず、答弁時間を潰そうとしているだけです。安倍首相は自らの考えが絶対に正しいと思い込んでいるのです。そのように正しさを所有し、反対意見を排斥するのは、革新政権のやることです。

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