0歳の長男絞め殺した30代うつ病女性の懺悔

なぜ彼女は愛しいわが子を手にかけたのか?

実家に戻った美緒被告は一日中眠り続け、外にもほとんど出なかった。「自分のうつは絶対に治らない」という考えに支配され「うつが治らない自分は子を育てられない」と思い込むようになり、出産前から自分の服を結びあわせて自殺を試みるなどしていた。

それでも、彼女は子を出産した。産後も夫とは離れ、自分の家族とともに健ちゃんを育てながら実家で過ごしていた。以降も「死にたい」という考えに支配され、死のうと早朝に踏切を探してうろつく日々を送る。そんな中で起こした事件だった。

犯行直前に夫に送ったメッセージ

健ちゃんが産まれたときのことを、美緒被告は被告人質問でこう振り返る。

「安産です、と言われました。ちゃんと元気で産まれてきてくれた。小さくてかわいいな、と思いましたが、それと同時に育てていけるのかなと不安がよぎりました」

実家での育児は美緒被告が主体となり、ミルクやおむつ替え、沐浴などを行っていたが「母は毎日、お風呂を一緒に入れてくれたり、ミルクを作ってくれたり、姉は仕事から帰ると必ず抱っこしてあやしてくれていました」という。美緒被告が眠る時間も、ある程度は確保できていたようだった。当時、美緒被告は「育児日記」をつけており、ミルクやおむつ替えの回数も毎日記録していた。まじめにお母さんを頑張っていたのだ。だが、胸の中に渦巻く不安は消えない。

「うつ病が治らないという気持ちは変わりませんでした。また、本来……母なら、子どものことを心から愛してるって思えるかと思うんですけど、そのとき私は、健ちゃんに限らず、いろんなことに興味を持てなくなっていて、何もする気が起きない、無気力で、健ちゃんに対してもっと愛してあげたいと思っていたんですけど……(嗚咽)」

考えは止まらず、美緒被告はこのとき、「元夫との結婚にうつ病の原因がある」という思いにとらわれ始めていた。

「私が元夫の家にあいさつに行く日や、両家の顔合わせの日、入籍予定日、すべて、元夫のおじいさんやおばあさんに不幸があって全部延期になりました……。これは元夫のほうのご先祖様が結婚に反対してて、警告していたのに結婚したので私が体調を崩して大変なことになっているんだと思いました」

そのため「やっぱり結婚したのが良くなかったのかな」と悔いが大きくなっていったのだという。そして事件の日の朝、元夫にこんなLINEメッセージを送った。

「健ちゃんを助けたければ来て」

だが、この日は平日で元夫は仕事中だった。美緒被告は姉や友人にも電話をかけたが通じず、そのまま時間は過ぎ「何をしていたか覚えていない」まま14時半を迎え、事件に至ったのだという。

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