親の認知症に悩む子を助ける新種保険の正体 本人の行方不明や子の介護離職などに備える

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人生100年時代を迎える中、「まさか」のための備えは誰にとっても必要だ(撮影:今井康一)

これまで損害保険商品の中心は自動車保険だった。実際、損保の収入保険料の5~6割を占めている。ただ、今後カーシェアリングの浸透や自動運転車の普及などで、車の台数そのものが減少し、自動車事故リスク自体が減ってくれば、損保の保険料に占める自動車保険の比率が低くなっていく可能性も出ている。

そんな未来に危機感を募らせる損保会社が、新しいタイプの保険商品を次々と編み出している。東洋経済は9月25日発売の『週刊東洋経済臨時増刊 生保・損保特集2018年版』で生命・損害保険会社の最新事情を追っている。

100年長寿時代とされる中、健康で長生きできればそれにこしたことはない。だが、長生きすればするほど、病気になるリスクも増えてくる。長寿によって今後増加すると予想されているのが「認知症」だ。

行方不明時の捜索支援アプリを提供

厚生労働省は、2012年に462万人だった認知症患者が2025年には700万人に達すると推定している。実に高齢者の5人に1人が認知症になる計算だ。認知症になった場合、本人や家族にはさまざまな負担が生じる。その治療費などをカバーする補償は、生命保険会社が販売している「認知症保険」などがあるが、損害保険会社も認知症にかかわるリスクをカバーする新しいタイプの保険商品を用意している。

『週刊東洋経済臨時増刊 生保・損保特集2018年版』(9月25日発売)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

東京海上日動は今年10月から、40歳以上(年齢制限なし)の認知症の人や家族のための専用商品「認知症あんしんプラン」を発売する。大きな特徴は、認知症患者が行方不明になったときの捜索費用の補償を柱にしたことだ。認知症の人と家族が抱える不安で最も大きいのは「行方不明になるリスク」。認知症の人の移動手段は、徒歩に次いで自動車利用が多く、遠方で発見されることも少なくない。

認知症の人を発見した後の、タクシー利用などによる送迎費用や運転代行費用、介護事業者や探偵に捜索を依頼した場合の費用などを補償する。具体的には、認知症の人が行方不明になってから24時間経過しても発見されず、親族が負担した捜索のための費用を、1事故について30万円、保険期間を通じて100万円を限度に支払う。

これに加えて、認知症の人やその家族が日常生活で他人にケガをさせたり、他人の財物を壊したり、線路への立ち入りで電車などを運行不能にさせた場合などで、法律上の損害賠償責任を負ったときに備えて、1事故について1億円を限度に保険金を支払う。(個人賠償責任補償)

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