酷い争い生む不動産「きょうだい相続」の悲惨 最悪の場合、わが子の代まで争う可能性も

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不動産の共有はどんどん争いが誘われていく(写真:CORA/PIXTA)
預貯金、株、不動産……平等に分けられないからこそモメる相続だが、なかにはうまくいっている家庭もある。相続でモメる家族とモメない家族は何が違うのか? 実は、そのカギを握るのが「長男」だ。累計13000件以上の相続を見てきた税理士法人が、相続トラブルを未然に防ぐ円満解決のヒントを解説する。

相続がモメる大きな理由の1つに「不動産の共有」があります。以前、こんなケースがありました。

父親が亡くなり、お母さん、長男、長女、次男の3人の子どもが相続することになりました。父親の遺言には、「所有しているビルについては長男が4分の3、長女が4分の1ずつ相続すること、預貯金は母親と次男で分けなさい」と書いてありました。

長男は跡継ぎだから少し多めにと考えた、バランスのいい分け方に見えます。そして実際、一次相続のときはモメることなく、遺言通りに相続されました。しかし、これで本当にいいのでしょうか。モメるのはこのあとです。

父親が一代目で、3人の子どもたちが二代目のうちは、きょうだい間で話し合いもし、父親の遺言でもあるため、理解があるからまだいいのです。問題は三代目、このきょうだいたちの子どもの代になって噴出することが多くあります。

「不動産を共有する」と近い将来大変なことに…

たとえば長男、長女、次男にそれぞれ2人の子どもがいるとしましょう。つまり6人の甥っ子、姪っ子がいることになります。この三代目たちが相続することになったら、長男と長女で共有していたビルはどうなるでしょう。長男に相続されたビルの4分の3を子ども2人が相続、長女に相続されたビル4分の1を子ども2人が相続……もう複雑すぎてわかりませんよね。

しかも、一つ屋根の下に暮らしたきょうだいと違い、甥っ子姪っ子同士はそれほど親密ではありませんから、話し合いで理解しあえるかどうかはわかりません。もう何も決められない、甥と姪の誰か1人が反対したら何も進まない相続になってしまいます。相続というものは、かかわる人間が多ければ多いほど、前に進むのが困難になります。

不動産の共有は、このようにどんどん争いが誘われていくため、私たち税理士は不動産の「共有」という字は「競誘」のほうが適当ではないかと思っているくらいです。そもそも不動産をきょうだいで共有すると、修繕するにしろ、売るにしろ、みんなの意見が合わないと何も動けません。

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