JR北海道、深刻すぎる「台風・地震」ダブル被災 経営再建計画の見直しが必要になる可能性

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7日も特急は終日運休、在来線も運行再開のメドが立っていない。しかし、新千歳空港と札幌を結ぶ「快速エアポート」については、「現在も点検を進めているが、問題がなければ午後1時に運転再開し、1時間に2本程度走らせたい」(広報部)。

また、北海道新幹線は昼頃から運行再開の予定だ。東京を9時36分に出発した「はやぶさ11号」が運転再開1番列車となる。新青森を12時37分に出発して新函館北斗に13時38分到着予定だ。また、新函館北斗からは13時35分発の「はやぶさ28号」が本州に向う。なお、新函館北斗から函館市内に向う「はこだてライナー」は現在のところ運行再開予定が立っていない。

気がかりなのは、軌道の被災状況だ。6日夕方の時点で、JR北海道広報は「インターネットもファックスも使えず、広報では被災状況を把握できていない」としていた。代わりに、国土交通省が情報収集を行い、6日14時の時点で千歳線・南千歳―沼ノ端間で軌道変位が生じていると発表している。同区間は震源地からあまり離れていないことから、軌道がどの程度変位しているのか心配である。

そのほかの被災状況としては、室蘭線と石勝線の複数箇所で倒木があったと発表されているが、7日朝4時の発表では記載がなくなっている。代わりには石勝線・南千歳―清風山間に軌道変位があったと発表されている。

また、札幌地下鉄や道南いさりび鉄道では「施設被害なし」と発表されているが、JR北海道のすべての路線は7日朝4時時点でも「施設点検中」のままだ。つまり今後の点検次第ではさらに被害箇所が増える可能性もある。

地震が起きたのが朝3時台だったことから、乗客を乗せた列車は運行していなかった。貨物列車は12本が走っていたが、いずれも駅間で停車し、脱線はしていないという。

経営再建計画の見直しも?

経営再建途上のJR北海道にとって、今回の台風と地震のダブルパンチはあまりにも手痛い。

道内の路線見直しを進めるなかで、苫小牧と札幌を結び、新千歳空港のアクセス線という役割を持つ千歳線は利用者が多く、同社にとってドル箱的存在だ。もし運行再開に長期間を要することになれば、今期の収益にも影響を与えかねない。また、もし復旧費用に莫大な資金がかかることになれば、経営再建計画の見直しも迫られかねない。

中国地方の豪雨、関西を直撃した台風、そして今回北海道で起きた地震。平時にはほかの交通手段と比べはるかに大量の人や物を運ぶ鉄道が、巨大災害にはあまりにもろいことが浮き彫りになった。地震の状況が落ち着いたら、巨大災害に対する鉄道の備えについて国をあげて議論する必要がありそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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