好調「ノース・フェイス」を支える富山の技術 ゴールドウイン・西田社長に聞く強さの秘密

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販売が好調な米国のアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」。日本ではゴールドウインが販売を手掛ける(撮影:尾形文繁)
2020年の東京五輪開催まであと2年を切り、沸き立つスポーツウエアメーカーの中でも、とりわけ絶好調の会社がある。米国のアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」を手掛けるゴールドウインだ。8月初旬に発表した2018年4~6月期決算は、ザ・ノース・フェイスや「ヘリーハンセン」などアウトドアブランドが牽引し、売上高は前年同期比19%増の148億円、営業利益は同127%増の11億円と拡大した。
今春夏シーズンもザ・ノース・フェイスは前年対比で2ケタ成長を続けており、期末の11期連続増益に向けて滑り出しは上々だ。好調の背景、東京五輪開催に向けての意気込みを西田明男社長に聞いた。

ゴールドウインはコントロールを徹底している

――はやりすたりがあるアパレル業界で、「ザ・ノース・フェイス」の人気が長期間持続し、好調な業績を牽引し続けています。理由は何だと分析していますか?

これまで何回か、業績の山と谷を経験してきた。勢いのある時代がまたやってきたなと感じている。

当社は、自社ブランド「ゴールドウィン」に加え、米国のアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」やノルウェーのマリンスポーツウェアブランド「ヘリーハンセン」など海外ブランドとライセンス契約や商標権を取得し、日本で展開する商品の企画、販売を行っている。

スキーブームに支えられ、1980年代初めから1990年代半ばまでは、イタリア発祥のスポーツウエアブランド「エレッセ」や自社ブランド、ゴールドウインのスキーウエアを中心に売り上げを伸ばし、大きな山を築いた。

だが、バブル崩壊でスキーブームは去り、その後の急激な落ち込みにうまく対応できず、1997年度には純損失41億円、1998年度には純損失55億円という厳しい状況を経験している。2011年以降、売り上げはかつてのスキーブーム同様に右肩上がりを続けているが、当時と違うのは、つねにブレーキを踏んでいるということ。アクセル全開で売り上げを伸ばし、急ブレーキで在庫の山に苦しめられた過去の失敗を繰り返さないように、お客様に何が評価され、何が評価されていないのか、需要を慎重に見極めている。

かつては1つの商品がヒットすると、その商品だけをどんどん売っていく傾向があった。たとえば、ある1人のお客様が特定の商品が欲しいと店舗に行き、在庫切れだとほかの店舗に行く。それでもなくて、次の店に、それでもなければ次の店に行く。

お客様は1人かもしれないのに、営業担当者がスポーツ用品店など販売店を回り、「ヒット商品を欲しがっているお客様がいるのに商品がない状況があった。もっと持ってきてほしい」と言われ、特定の商品を山のように卸していた。ほかにも売りたい商品はたくさんあるのに、卸売りではコントロールできない。

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