スベるコンテンツに絶対足りない3つの基本 制約は当然、やらされ感でなく大義を持とう

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そしてその目的はただ「商品を売りたい」とか「視聴率を稼ぎたい」といった目先のものではなく、「世のため人のためになるようなもの」、大げさに言えば「大義」と呼ばれるようなものでなくてはいけません。「世のため人のためになるもの」には必ずニーズがあり、そこにマーケットが存在します。ただ「売りたい」「流行らせたい」「人気になりたい」といった目的は、自社のためのものでしかなく、誰の心にも響きません。

以前、『世界行ってみたらホントはこんなトコだった!?』という番組を企画しました。この番組では2人のディレクターがレポーターとなって長期間海外に滞在・取材し、その国の意外な文化や知られざる生活を紹介していきます。

「争いは誤解から生まれ、解決は相互理解によってもたらされる」といったことを聞き、この番組では「異文化を知ることの大切さを伝えること」を目的としました。番組放送中、「なぜ、レポーターがタレントではなくディレクターなのか?」といった質問をよくされましたが、海外の文化や生活の深いところを知るためには長期間のロケが不可欠であったため、長期間の時間的拘束が難しいタレントさんではなく、結果としてディレクターになったのです。

もし仮に目的が「海外旅行の楽しさを伝える」であったら、レポーターにタレントさんを起用していたでしょうし、番組のつくり方もまったく別のものになっていたはずです。

大きな目的を考えていくと「愛の素晴らしさを伝える」とか「家族の団欒の大切さに気づいてもらう」といった、ちょっと恥ずかしいことに行きつくかもしれませんが、それぐらいの大げさな目的があるからこそ、コンテンツは多くの人の心を動かすことができるのです。

「制約」は邪魔なものではない

どんな企画にも、まず、「時間」「予算」「サイズ」という「制約」があり、コンテンツづくりを進めていく過程で、これらの壁に何度もぶつかります。「こんな予算じゃつくれない」「無茶な〆切だ」といった不満も出てきます。私も番組をつくっていて「この条件は厳しいなぁ」と感じる場面は何度もありました。

しかし、コンテンツづくりがうまくいかない原因を「制約」のせいにするのは大きな誤解です。むしろ「制約」のない状況でコンテンツを生み出すのは大変難しいものなのです。まず〆切がなければ、いつまでもつくり直し、完成させられなくなってしまいますし、未完成のまま日の目をみないというケースさえあります。また、何の制約も条件もなく「自由に好きなものをつくって」といわれると、つくる方は途方に暮れてしまいます。何の制約もない中でモノづくりをするのは、芸術家です。そして、芸術家の皆さんは常に苦悩されています。それは何も制約がないからです。

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