アメリカ「北朝鮮戦略」のヤバすぎる混乱状態 ポンペオ国務長官の訪朝は直前で取り消し

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トランプ大統領は、ポンペオ国務長官(左)の訪朝予定を直前になって取り消した(写真:ロイター)

アメリカ政府の北朝鮮政策が混乱状態にあることが日に日に明らかになっている。8月23日、マイク・ポンペオ国務長官は北朝鮮に関する新たな特使を任命し、ハイレベルの会談のために平壌に向かうと発表した。それから24時間もしないうちに、ドナルド・トランプ大統領が長官の訪朝を取り消すツイートをしたのである。

ただし、この混乱状態においても、一定の「法則」はある。首都ワシントンでの北朝鮮交渉チームのメンバー2人と、元アメリカ国家安全保障当局者(この人物はポンペオ国務長官と国家安全保障局から助言を求められている)を含む政府高官らとの取材を通じて、北朝鮮政策に対する当局関係者間に共通するおおよその見解がわかった。興味深いことに、この見解は日本政府高官らの見解とほぼ完全に一致している。

トランプ以外、完全な非核化は無理だと思っている

まず、この共通見解の根底には、北朝鮮特使に新たに任命されたスティーヴン・ビーガンが強調した「北朝鮮の完全かつ検証可能、不可逆的な非核化」という目標の達成可能性に関して非常に懐疑的な考え方がある。北朝鮮政府との会談の中で、どういったことが達成できるかに関してはいくらか違いはあるものの、この最終目標が達成可能だと考えている人物はアメリカ当局者には皆無である。トランプ大統領を除いては。

もう1つの共通見解は、北朝鮮に対して友好的な政策を推し進めてきた韓国の文在寅政権が、アメリカ政府と緊密に調整しながら動く必要性をもはや感じていないだろうという深い懸念だ。一部では同盟そのものが危機にさらされかねない、と危惧している。

一方、中国については、筆者が話を聞いた安全保障当局者は全員、中国政府の役割について悲観的な見方をする傾向にあった。彼らは、中国はアメリカを朝鮮半島から追い出すための道具として北朝鮮を利用したがっている、と考えている。

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