最悪の状況から「最高の音楽」が生まれた神秘 キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」

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キース・ジャレットの音楽家魂に驚嘆!(写真:内山繁/ウィスパーノット/アフロ)

今週末に聴いて頂きたい音盤は、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」です。ジャズの入門書では必ず取り上げられる傑作です。全編ソロ・ピアノによる即興演奏、しかも実況録音盤。キース・ジャレットの音楽家魂が凝縮しています。

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音楽家魂? 何ですか、それは?

たとえて言えば、「弘法は筆を選ばず」ということです。そこに聴衆がいれば、どんな劣悪なコンディションでも、最高の音楽を奏でるのだという意思とそれを実現する能力のことです。考えてみれば、これは音楽家や書道家だけのことではないかもしれません。いかなる分野のいかなる仕事であれ、時に想定外の状況に直面することがあります。プロフェッショナルとしては、矜持をもって最良の結果を出す、ということです。

ちょっと格好良すぎませんか?

まあ、そうありたいという心構えです。

体調もピアノの状態も最悪だった

それで、キース・ジャレットに戻ります。「ケルン・コンサート」は、1975年1月24日の深夜11時30分から約67分間の出来事を録音したものです。実は、この時のキース・ジャレットの体調も用意されていたピアノの状態も最悪でした。コンサート自体、キャンセルされてもおかしくなかったほどです。

キース・ジャレットが遭遇したのに似た状況は、ビジネスパーソンなら誰しも遭遇する可能性があります。

たとえば、高熱で朦朧としても先方との約束をリスケできないこともあるかもしれません。時間をかけて用意したプレゼン用のパワポがパソコンの不具合で使えない場合だってあります。しかし、予定の時間が来てプレゼンが始まります。体調が悪いとか機器の不具合なんて言い訳は通用しません。さあ、どうしますか。

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