350万人の日本人がまがいものを買っている 仮想通貨は本物の通貨にはなりえない

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仮想通貨は資金洗浄の手段として犯罪組織からも注目されているが、こうした特殊用途を別にすれば、ほぼ完全に投機の対象といっていいだろう。悪名高きオランダのチューリップバブルと同じだ。

2010年に1セントにも満たなかったビットコインは2017年末に約2万ドルの高値へと急騰。その後は急坂を転げ落ち、本稿執筆時点では6000ドル台まで下落している。「ダイ」のように価格変動が小さくなるよう設計された仮想通貨もあるが、ほとんど見向きもされていない。この点が証明するように、仮想通貨市場の本質はカジノだ。

とんでもない量の電力が必要に

一方、仮想通貨を日々の決済に使うと、とんでもない量の電力が必要になる。BISによれば、ビットコインの“採掘”に使われる電力だけで、すでにスイスの年間電力消費量に並ぶ。米モルガン・スタンレーによれば、1ビットコインを作り出すのにかかるコストは8600ドル。つまり、現在の相場では採掘するたびに、約2500ドルも損が出る計算だ。仮想通貨は利用時にも大量の電力を消費するため、深刻な環境問題につながるとBISは警告している。

コンピュータの処理能力もネックだ。仮想通貨はブロックチェーンと呼ばれる技術によって成り立っており、過去に行った全取引を電子的な台帳に記録していかなければならない。現在、ブロックチェーンのデータサイズはビットコインで180ギガバイト。

米国の小売りがすべて仮想通貨で行われるようになったら、あっという間にスーパーコンピュータでなければ処理が追いつかなくなり、急増するデータの重みでインターネットも遠からずパンクする──BISはそう予想する。今のところ仮想通貨による決済は限定的にしか行われていないが、それでも1回の処理に平均で78分もかかる。クレジットカードなら一瞬だ。

つまり仮想通貨は日々の決済手段となることもなければ、素人が手を出せるような安全な投資先ともなりえない。ギャンブルの対象やマフィアが使う闇通貨であることだけは間違いないのだが。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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