イタリア「高架橋崩落事故」は他人事ではない 日本のインフラ老朽化対策は大丈夫なのか

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イタリア・ジェノバで崩壊した高速道路の高架橋。本当に緊縮財政のせいで事故が起きたのか(写真:Vigili del Fuoco/AFP/アフロ)

8月14日、イタリア北部ジェノバにある高架橋モランディ橋が、約200mにわたって突然崩落し、30台以上の車やトラックが巻き込まれ、多数の死傷者が出た。1967年に完成したモランディ橋は、いくつもの構造上の問題があるとかねてから指摘され、大規模な補修が行われていた。また2009年から取り壊しが議論されていたという。

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完成から50年以上経った高架橋の崩落事故は、インフラストラクチャー(社会資本)の老朽化問題を想起させる。そして、1960~1970年代の高度成長期に多くのインフラを建設したわが国にとって、他人事でない印象を強く与えた。インフラの老朽化対策をきちんと講じないと、今回のような事故が起きかねない。

イタリアの全国紙「コリエーレ・デラ・セラ」によれば、イタリアにおける橋の崩落は2013年以降これで11回目であるという。

欧州債務危機でも注目されたイタリア

イタリアといえば、2010年に起きた欧州債務危機以降、国債金利の急騰にたびたび悩まされ、厳しい財政状況に置かれている。EU(欧州連合)の執行機関である欧州委員会に、財政収支を改善すべく緊縮財政を強いられてきた。その反動もあり、今年3月の総選挙では、多数派となったポピュリズム(大衆迎合主義)政党の連立政権として、現在のジュゼッペ・コンテ内閣が成立、欧州委員会が求める財政規律の維持に反発した。

一部の報道によると、近年におけるイタリアの道路投資は、2008年の世界金融危機以降、大きく減少しており、それは緊縮財政の影響も背景にあるとの見方を示した。

OECD(経済協力開発機構)のInternational Transport Forumが提供するデータによると、イタリアの道路投資額は、2006年に約143億ユーロだったが、2015年には約52億ユーロと、2006年の約3分の1に減っている。前述の報道はこれに基づいているようだ。道路投資額が往時の3分の1に減らされれば、道路の維持もままならない、と言いたいようである。

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