銀行の重荷になる「決済インフラ投資」のムダ 現場と乖離した「利益なき大型投資」の迷走

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本当に必要なのか疑問が持たれている案件も…(写真:cofotoisme/iStock)
金融緩和による副作用で経営が悪化の一途を辿っている銀行業界だが、膨大なコストがかかる決済制度改革を見直す気配はない。これらの決済関連の大型投資は本当に必要なのか。ほかに選択肢はないのか。『決済インフラ入門〔2020年版〕』を上梓した帝京大学経済学部教授の宿輪純一氏が解説する。

決済対応で膨大な投資

量的緩和による金融緩和の副作用で、銀行の経営が悪化している。金融庁によると、ほとんどの銀行が営業赤字ともいわれている。最終赤字の銀行も出始めるのとともに、それを背景としてか不祥事も相次いで発覚している。銀行の収益や株価は景気連動といわれている。地方経済の停滞、そして少子高齢化の潮流の中、そもそも経営環境は良くなかった。

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金融庁や日本銀行も手をこまねいているわけではなく、金融行政方針を発表し銀行経営の転換を図っている。不況産業であるので、当然、合併・統合の推進が奨励されている。貸出しについても、貸出しの拡大、特に起業時からの貸出しなども目標となっており、以前の不良債権ゼロの目標と比べると180度転換となっている。貸出しの拡大に関しては、基本的な姿勢は企業に人を送って、営業や経営の支援をして、自ら貸出しを作ることとなっている。これを日本銀行では「金融高度化」と呼んで推進している。

銀行の固有業務は、預貸業務と為替業務であり、為替業務は事務・インフラ部門となっている。現在も、決済制度・決済システムの改革が進んでおり、内部では「制度案件」として最優先で対応しなければならない。経営が危機的状況であって、さらに重荷になるのである。本当に必要なのだろうか。

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