83歳「前科18犯」、金があっても盗む女の悲哀

伝説のスリ師「デパ地下のさと婆」が述懐

83歳の老女がスリを止められない理由とは(写真はイメージ:AH86/PIXTA)

たまに世間をにぎわせる“伝説のスリ師”逮捕の報道をご記憶の方も多いだろう。何度もスリを繰り返していることから捜査員らに独特のあだ名をつけられている彼ら。

ギャンブル場を主戦場としていた「ギャンのタメやん」、尻ポケットから財布を抜く手口から「ケツパー(パーは財布の隠語)の吉井」。指で着衣をなでて財布があることを確かめていた「エンコ(指)ヅケのマツ」。電車のフックにかけた上着から財布を抜く“ブランコすり”という手口がそのままあだ名となった「ブランコスリの金さん」。今年3月に埼玉県警に逮捕された伝説のスリ師は、電車(ハコ)内でのスリ(モサ)という手口から捜査員に「ハコモサのヤス」と呼ばれていた。

彼らにそうした“異名”がつけられるのは、それまでに同じ手口でスリを重ね、何度も逮捕された過去があるからだ。ゆえに起訴罪名も単純な「窃盗」ではなく「常習累犯窃盗」となることが多い。過去10年の間に、窃盗罪で6カ月以上の懲役刑を3回以上受けた者がこの罪名となり、量刑も通常の窃盗罪(懲役1ヵ月以上10年以下)よりもはるかに重い「懲役3年以上」となる。

どことなくおかしみの漂う彼らのあだ名は、逮捕のたびにワイドショーでも笑いのネタにされているが、しかし彼らの家族にとってみれば、決して笑い事ではない。

2年前、東京地裁で開かれた“伝説のスリ師”のひとり「デパ地下のさと婆」の公判では、繰り返すスリ行為に家族が苦悩している様子が垣間見えた。

財布を見ると盗みたくなる83歳の老女

2016年3月に逮捕された時点で83歳だった“さと婆”の公判は、同年6月に東京地裁で開かれた。初公判の起訴状読み上げの前に行われる「人定質問」で本籍や住所を問われたが、「ちょっと忘れちゃった……」と返答。高齢による物忘れなのか、それとも公判での緊張なのか。だが、彼女は窃盗等での前科18犯。場慣れしているはずではある。

おそらく若い頃は身長150センチ台であっただろうが、年齢を重ね背中も曲がり、もっと小さく見える。足も具合が悪いのか、被告席から証言台の前まで歩くときには、腕を力いっぱい前後に振り、その勢いで前によちよちと進んでいた。傍目に見ると弱々しい老女だ。

そんなさと婆は同年3月18日14時過ぎ、JR上野駅1階中央改札口付近グランドコンコースで開催されていた「とちぎ産直市」において、女性が左腕に持っていたバッグ内の財布(時価5000円)を抜き取ったという常習累犯窃盗罪で起訴されていた。

冒頭陳述によれば、さと婆は18歳からスナックで働いていたが、盗みで服役を繰り返し犯行時は無職。婚姻歴があるが離婚していて、長男家族と都内で同居していた。

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