83歳「前科18犯」、金があっても盗む女の悲哀

伝説のスリ師「デパ地下のさと婆」が述懐

「上野駅で物産展を何げなく見ていると、被害者のバッグに財布が入っているのが見えてきた。女性の財布が見えた途端、金を手に入れたいと思った。盗みやすいところへ行くために横へ移動した。女性が買い物に夢中になっているとき、右手を伸ばしてバッグに入れて財布を指でつかんで取り出した。駅の中を歩いていたら女性と警察がやってきて、スリがバレた」(さと婆の逮捕時の調書)

財布を見ると盗みたくなる性分だったさと婆は、前述のとおり何度も服役を繰り返しており、かつては家族も公判に証人出廷したことがある。

だが、伝説のスリ師としての異名が災いしたのか、窃盗という微罪でありながら、ここ近年は逮捕のたびに報道がなされ、このときもスポーツ新聞だけでなくワイドショーやニュースまでも、彼女の人生や生活実態について広く報じていた。

息子夫婦、孫、家族の誰一人として裁判に参加せず

そのためか家族は誰も、情状証人(起訴事実を認めている被告人が再び罪を犯さないよう擁護・監督する証人)として出廷しなかった。

さと婆は2012年にもスリで実刑判決を受けている。そのときは息子の妻と孫が情状証人として出廷したというが、今回は20席の傍聴席には傍聴マニアや記者らの姿しかない。長男は次のような上申書を提出していた。罪を重ねる母親を巡り、公判前から取材が過熱していたことをうかがわせる。

「自宅にマスコミが押し掛けたとき『話をしないのであれば、裁判で聞かせてもらう』と言われたので、今回は出廷しなかった。母が犯罪を重ねるたびに、厳しく言い含めてきた。外に1人で行かないように言っていた」

長男含め、ほかの家族も、さと婆が再びスリに手を染めることがないよう皆で見守ってきた。

「夫と一緒に、1人で外に出ないようには言っていた。被告人のために食事を作ったりしていた」(長男の妻の上申書)

「1人でおばあちゃんが外出しないように努力してきた。出所後も同じように接しておばあちゃんの好きなプロレスに連れて行ってあげたい」(孫の上申書)

当のさと婆は、前の罪における出所の時期を問われ「忘れちゃった……」と答えるほどに物忘れがすすんでいたようだが、「出所後は息子やその嫁からも、もう2度と悪いことをしないよう、家にいるように言われていた。孫は2人いるが、その2人からも『おばあちゃん、悪いことは2度としないように、買い物も一緒に行くから外に出歩きしないでね』って……。買い物もね『おばあちゃん、家にいる時は絶対(1人で)家を出ないようにね』と、鍵閉められていました」と、再犯を犯さないよう家族が願っていたことは認識していた。

だが犯行当日、さと婆は、家族が再三止めていた1人での外出をしてしまった。法廷で見せたよちよち歩きでは、1人で自宅から上野まで出向くのすら大変そうなのに。なにか理由があったのか。

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