今さら感ある「定借」が、実は結構お得な理由

パナソニックが考える「ゼロ円」にならない家

LDK全体が庭に面した住戸。どの住戸も程度の違いはあるが、庭を借景として楽しめるつくりとなっている(筆者撮影)

2018年7月、埼玉県さいたま市桜区でパナソニック ホームズが手がけた一戸建て分譲地の記者発表が行われた。戸数6棟と小規模だが、一般的な分譲地と大きく異なる点がある。所有権ではなく、定期借地権の分譲なのである。

ここまでだったら、そこまで驚かないかもしれないが、面白いのは6棟の中央部分に「共有庭」があることだ。今回パナソニックは、宅地化に当たって必要な敷地延長(接道義務を果たすために設けられた私道)部分を中央に置き、それを共用庭とするランドプランを考えた。これによって、同じ土地を所有権で売る場合の一般的な敷地割りとは、まったく違う環境が生まれる。

左が現状で、右が所有権として分譲することを想定した例。所有権だと価格が高くなるため、敷地を狭くして戸数を増やすケースが多く、この敷地だと8戸ほどになるが、狭い印象だ(パナソニック提供)

実際、訪れてみると共用庭は図面から想像した以上に広く、気持ちいい。今、首都圏で売られている庭付き一戸建ては庭と言いながら、子どもが遊べるスペースにすらならないことが多いが、ここなら十分子どもが走り回れる。カギはかかっていないものの、ゲートがあって不特定多数が入りにくいことから、安心して遊べる場とも言える。

「借地では不安」という考えが根強かった

1992年に施行された借地借家法で誕生した定借だが、近年では年間100戸の供給もない年が続いてきた。今さら、その定借で、しかも、パナソニックが住宅を供給する意味はいったい、どこにあるのだろうか。

定借は、借り手の権利が強く、一度貸すとなかなか返還されないという問題を抱えた従来の借地権を是正する意図をもって作られた。当初定められた契約期間で借地関係は終了し、再契約はあり得ても、更新はされない。この制度によって土地所有者は安心して土地を貸せ、借りる人はより少ない負担で住宅を所有できるようになるとされた。

1992年の施行以降、2002年度には4000戸近くの一戸建てが供給されたが、それをピークに減り、2017年度には86戸が供給されたにすぎない。供給側は土地代が安い分、広く、質の良い住宅が手に入るとしたが、多くの人は借地では不安だったのだ。1991年をピークに土地価格が下落した影響もある。2000年には都心回帰が言われ、都心に土地を買える時代になり、わざわざ定借で買う必要性は弱まったといえる。

パナソニックが定借を利用しての住宅供給を検討し始めたのは、2018年の創業100年を前に、各種事業や目標などの見直しを行っていた2015年のこと。家電を通じて、日本の生活を家の中から豊かにしてきた同社だが、家電はそれなりに行き渡った感がある。だとしたら、次の100年は生活の場となる家そのものを豊かにすることで、日本人の生活を本当の意味で豊かにすることはできないか――。

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