酷暑の「夏の甲子園」次の100年へ必要な対策 大胆なパラダイムシフトの契機にすべきだ

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第100回全国高校野球選手権大会の開会式でペットボトルの水を飲む選手たち(写真:共同通信社)

第100回の記念すべき「夏の甲子園」が8月5日に開幕した。今年は史上最多の56校が出場し熱戦が繰り広げられている。

これまで1県1校が原則だったが、今年は従来の北海道、東京に加え、愛知、神奈川、大阪、千葉、兵庫、埼玉、福岡の各府県からも2校ずつが出場した形となった。

しかし、今年ほど「夏の甲子園」の問題を指摘する声が高まった大会もなかったのではないか。

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何といっても「酷暑」の問題。

関東甲信地区は6月29日に梅雨が明け、猛暑が始まった。近畿東海九州北部なども7月9日には梅雨明けし、全国的に最高気温が35度を超す猛暑日が続いた。

気象庁は「災害並みの猛暑」であり、「命を守る対策」を呼びかけた。

そんな中で、愛知県豊田市の小学1年生が課外授業のあとに熱中症で死亡する痛ましい事故も起こった。部活中に病院に運ばれる生徒も多数に及び、猛暑の中での学校活動や部活動を自粛する動きが全国に広がった。

酷暑の中での地方大会

滋賀県高野連は7月20日、開会中の地方大会の日程を変更し、21、22日の2日間、4試合ずつ計8試合実施する予定だった3回戦を、気温が高くなる午後の時間帯を避けて、午前開始の2試合のみに変更し、21~24日の4日間に分散させて開催した。

また、大阪府教委は同日、大阪府高野連に熱中症対策として試合をナイターで実施したり、開始時間をずらしたりすることの検討を要請した。こうした一連の事態も前例がなく、今年の酷暑の深刻さを思わせた。

実際、京都府高野連は、京都大会準々決勝の第4試合で猛暑対策として異例のナイター開催に踏み切った。この試合は延長11回の熱戦となり、終了時刻は午後10時を過ぎた。選手や審判の健康面を配慮した結果だった。

それでも地方大会では、熱中症になる選手や観客が続出。7月30日の西東京大会決勝戦、日大三―日大鶴ケ丘戦では、試合後、日大鶴ケ丘の勝又温史投手が体調不良を訴えて救急搬送され、脱水症状を伴う熱中症と診断された。

幸いなことに、地方大会は死者など深刻な健康被害を出すことなく終了したが、甲子園の大会期間中も酷暑が続くことが想定される。気温が異常に上がる場合は、試合時間を変更するなど、柔軟な対応が必要だ。

もちろん、今100回大会において、日本高野連(公益財団法人 日本高等学校野球連盟)は対策を講じてはいる。

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