迷走3カ月で本命に戻った財務次官人事の裏 最強官庁の復活は「日暮れて道遠し」

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最強官庁の権威にも陰り(撮影:梅谷秀司)

延長国会閉幕を受けて、いわゆる霞が関人事とよばれる中央省庁の幹部交代が進む中、最も注目されていた財務省では事務次官に岡本薫明・主計局長(入省は1983年)、国税庁長官に藤井健志・同庁次長(同1985年)をそれぞれ昇格させることを軸とする新布陣が決まった。これにより、森友学園問題に絡む公文書改ざん事件とセクハラ問題で、今春に佐川宣寿前国税庁長官(同1982年)と福田淳一前事務次官(同1982年)が相次いで辞任に追い込まれて以来の"ツートップ不在"が約3カ月ぶりに解消した。

岡本氏はもともと事務次官候補の大本命だっただけに、「いろいろあったが、結局元のサヤに戻った」(財務次官OB)と同省内からは安どの声が漏れてくる。ただ、前代未聞の不祥事連発についての責任問題も絡んで、幹部人事が長期間迷走を続けただけに、本流を歩んできた岡本次官をリーダーとする新体制の前途はなお厳しい。「官庁の中の官庁」としてキャリア官僚が集結する「霞が関」に君臨し続けてきた最強官庁の復活は、「日暮れて道遠し」(同)との見方も少なくない。

麻生太郎財務相は27日午前の閣議後の記者会見で、セクハラ問題で事務次官を辞任した福田氏の後任に岡本氏を主計局長から昇格させるなどの幹部人事を発表した。学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題で国税庁長官を辞任した佐川氏の後任には、同庁次長の藤井氏が昇格した。この人事は27日付けの発令で、岡本新体制は直ちに始動した。麻生氏は会見で「信頼回復に向け、財務省の再生に取り組む」と強調し、最高責任者の財務相としては、態勢立て直しに全力投球することで責任を果たす考えを改めて示した。

ツートップ長期不在で堕ちた財務省の権威

次官人事に伴う財務省幹部の新たな陣容は、岡本氏の後任の主計局長に太田充氏(入省は1983年)が理財局長から昇格し、理財局長には可部哲生総括審議官(同1985年)が就任した。さらに、関税局長には中江元哉首相秘書官(同1984年)、総括審議官には茶谷栄治主計局次長(同1986年)が充てられた。次官級ポストの浅川雅嗣財務官(同1981年)は留任する。

財務省にとって「過去最悪の不祥事」となった公文書改ざん事件では、首謀者とされた佐川氏が3月9日に辞任に追い込まれた。この改ざん事件では佐川氏や理財局の担当者らが民間団体の告発により大阪地検特捜部の捜査対象となったが、同特捜部は5月31日に佐川氏を含む当時の理財局幹部ら38人全員を不起訴処分とした。

ただ、不起訴処分を不服とする市民団体などが6月上旬に相次いで検察審査会に審査を申し立てた。検審で「起訴相当」か「不起訴不当」が議決されれば同地検が再捜査することになり、事件はまだ「一件落着」とはなっていない。このため、佐川氏は今後も、国会などでの追及対象となり、再就職も困難な状況が続くとみられている。

一方、財務省担当の民放女性記者に対するセクハラ問題が発覚した福田氏は4月18日に辞任した。福田氏は自らのセクハラ行為は否定したが、メディアなどから集中砲火を浴びたことで「職務遂行が困難になった」と辞表を提出した。福田氏自身は「名誉回復のため法廷で争う」との姿勢を示したことで、こちらも最終決着にはなお時間がかかるとみられている。

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