フェラーリと筋ジストロフィーの意外な関係

エンツォの息子、ディーノが送った人生

フェラーリ ディーノ 246GT(写真:Gaschwald/iStock)

1429年、ジャンヌ・ダルクは神の声を聞いて救国の戦いに参加した。だがその神秘的体験は側頭葉てんかんの仕業ではなかったか? 1865年の南北戦争終結時、北軍の冷酷なグラント将軍が南軍に寛大だったのには片頭痛が関係していた?

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世界の歴史を大きく変えたリーダー変節と、その元凶となった脳の病を、脳神経内科専門医の著者が世界の論文や文献をもとに解説した『世界史を動かした脳の病気 偉人たちの脳神経内科』(小長谷正明氏著・幻冬舎新書)から、歴史的有名人の病を紹介します。

フェラーリには「ディーノ」というモデルがあります。これは夭逝したフェラーリ社の御曹司ディーノ・フェラーリの名を付けたモデルであり、彼の命を奪ったのは原則として男子に発症する難病でした。

病院に届くF1のエンジン音

筆者の病院がある鈴鹿は、言わずと知れたモータースポーツのメッカで、F1グランプリなどでワールド・フェイマスの町である。毎年秋になってF1レースの日本グランプリのシーズンに入ると、試運転やチューンナップするF1マシーンが発するエンジンの轟音が、サーキットから5、6キロメートルも離れたわが病院にも届いてくる。

つい数年前までは、ミハエル・シューマッハが赤いフェラーリのマシーンを駆って、前後10年間も勝利を重ね、エンブレムの跳ね馬のいななきが町中に響き渡っているようであった。そのフェラーリの一般向けスポーツカーに、ディーノ・フェラーリというモデルがある。ディーノはフェラーリ家の御曹司で、実は、この子はある難病にかかっていたのだ。

幼いアルフレード・フェラーリは、レーシング・マシーンのドライバーを夢見ていた。アルフレードの愛称がディーノである。父のエンツォ・フェラーリは彼が赤ん坊の時からいつも、「お前は大きくなったらモーター・カーのドライバーになって、レースに出て優勝しろ」と語りかけていた。

エンツォは、かつてミラノのアルファロメオ社のテストドライバーをやっていたし、レースで走ったこともある。アルファロメオもイタリアの有名な自動車メーカーだ。しかし、その会社には、エンツォよりももっとカー・テクニックに勝るドライバーがいた。結局、彼はモーター・レーサーの道をあきらめて、アルファロメオのカー・レース・チームのマネージメント会社として、スクーデリア・フェラーリ(フェラーリ厩舎)を立ち上げた。

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