参議院「定数6増」はいくらなんでも酷すぎる 自民党の利益を守るためだけの「改革」だ

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2016年の参議院選挙で高知県選挙区から出馬予定だった中西哲氏は39万951票を獲得して比例区4位と上位で当選。その一方で鳥取県選挙区から出馬するはずだった竹内功氏は8万7422票しか取れず、次点に泣いた。

中西氏には徳島県出身の中西祐介氏が所属する麻生派が全面支援したが、島根県出身の青木一彦氏を鳥取県連が全面的に応援したにもかかわらず、額賀派(当時)の竹内氏に対する協力は少なかったからとされている。

この結果によって、鳥取県自民党は不公平感を抱いたに違いない。だがそれは党内で解消すべき問題である。そのために制度自体をいじる必要があるのだろうか。そもそも憲法第43条は「国会議員は全国民の代表」と規定しており、地方の利害関係の代表としていない。

すでに地元の声は衆議院で国政に反映されており、同じような観点での代表制であるなら、参議院の存在価値を見出すのは難しい。

地域代表なのであれば憲法改正が必要

もっともアメリカの上院のように、人口比例とは無関係に州単位に代表を出すとするには、憲法を改正しなければならない。憲法をいじらずに1票の格差を縮め、かつすべての県から代表を出そうとするのなら、定数を一定とする限りは選挙区選出議席を増やす分、比例区選出の議員数を減らすしかないだろう。だがそうするには、比例区選出の議員や少数政党からの抵抗が大きすぎる。比例区もまた「特権」となっているからだ。

そこで出てきたのが今回の定数6増の自民党案。合区で減った4議席分を比例区に足しており、比例区の議員の既得権を損ねていない。

野党は当然賛成しなかった。とりわけ強く反対したのが、参議院廃止論を主張する日本維新の会だ。

同党は参議院政治倫理・選挙制度改革特別委員会(倫選特)の議事運営を不満として、単独で石井浩郎委員長の問責決議案を提出した。同決議案は与党によって本会議の上程を阻止されたが、法案の10日の採決は見送られた。

参議院で野党第一党の国民民主党も立憲民主党とともに、石井委員長の解任動議を委員会に提出したが否決された。ここで注目すべきは、野党の足並みが一致していない点だ。維新の問責決議案が本会議に上程されなかったのは、国民民主党が賛成しなかったからとされている。

それはまるで、民進党が持っていたIR法案を管轄する内閣委員会委員長を自民党に奪われた時と同じ構造だ。

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