天皇のお言葉に秘められた「烈しさ」を読む 日本史上の危機に何度か発せられてきた符牒

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私たちはあの「お言葉」をどこまで理解できているのだろうか?(撮影:恩田陽)
退位のお気持ちが表明された「お言葉」から2年。しかし、私たちはあの「お言葉」の衝撃を本当の意味で、どこまで理解できているのだろうか? 『国体論――菊と星条旗』で注目を浴びる、政治学者・白井聡さんが、気鋭の哲学者・國分功一郎さんとともに、平成における「天皇」について白熱した議論を展開する。

誰よりも右で誰よりも左の書

國分:『国体論――菊と星条旗』は天皇のお言葉の解釈から議論が始まります。白井君はここで、天皇がお言葉を語る口調に「烈しさ」を感じたと書いています。僕はこの言葉を見たとき、思わず赤ペンで丸をつけてしまったんです。

通常、「はげしい」を漢字で書くとき、「烈」という漢字は使いませんね。この漢字は沸々と燃えたぎるマグマのようなものをあらわしています。白井君の著作の特徴というのは、こうした言葉使いにあると思う。

『永続敗戦論』が非常に多くの人に読まれた理由の1つも、白井君の文体が何か新しさを持っていたからだと思う。ドゥルーズがよく引用するプルーストの言葉に、「美しい本はどれも一種の外国語で書かれている」というものがありますが、白井君の本にはある種の日本語の創造がある。僕は『国体論』を読み、新しい思想は新しい言葉とともに出現するということを再確認したんですね。

ともかく、『国体論』は、この天皇の烈しさに応えることを1つの課題としています。だから、この本を読むときには、この烈しさという言葉を大事にして読んでいく必要があると思ったんですね。

白井:ポイントを衝いた読み方をしてもらって、感謝しています。「烈しさ」という漢字をごく自然に選んだのは、天皇が「お言葉」を語る姿からにじみ出ていたものが、まさにそのようにしか感じられなかったからです。

國分さんは天皇のお言葉が発表されたとき、どういうご感想をお持ちになりましたか。

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