意外と知らない、そもそも「おカネ」とは何か 池上彰が教える、"大人のための"教養教室

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おカネの成り立ちを知っていますか(写真:gaffera/iStock)
インターネットやテレビ、新聞などで見る「経済」や「政治」のニュース。私たちは、それら数多くの情報を見聞きしながら、自分を取り巻く世の中の“今”や“それまで”を知り、思いをめぐらすことになる。しかし、知り得た情報の“根っこ”にある「基礎となる知識」を見つめたとき、それを“知っているようで知らない”人は、実はけっして少なくないはずだ。
この記事では、キャッシュレス時代が普及するにつれ、その原点についての知識がおろそかになりつつある「おカネの成り立ち」に着目。新刊『イラスト図解 社会人として必要な経済と政治のことが5時間でざっと学べる』を出版したジャーナリスト・池上彰氏に、私たちがおカネに向き合ううえでの「教養」として知っておくべき“そもそも”の部分に的を絞り、わかりやすいイラスト図解を使いながら解説してもらった。

それは「物々交換」から始まった

ジャーナリストの池上彰氏(画像提供:KADOKAWA、撮影:星智徳)

大昔の日本では、人々は狩猟をしたり、木の実を集めたり、魚介類を獲ったりして生活していました。そして、やがて稲作が大陸から伝わったことで、米作りも始まりました。

たとえば、あなたが海辺に住んでいて、魚や貝を獲って生活していると考えてみてください。獲った魚を家族で食べているうちに、たまには獣や鳥の肉を食べたくなったり、野菜や果物もほしくなったりするはずです。また、衣(い)、つまり着るものもほしくなるでしょうが、それには動物の毛皮のような材料も必要になります。

しかし、魚以外のものを手に入れるには、あなたのところに余分に確保されている魚や貝を、ほかの人が持っている肉や毛皮と交換する必要が出てきます。これが「物々交換」です。

物々交換が成立するためには、あなたがほしい肉を持っている人が「魚をほしがっている」という「偶然」も必要です。つまり、「大昔は物々交換をしていた」といっても、実はそう単純にはいかなかったのです。とりわけ、魚や肉はすぐに腐ってしまうので、早く交換しなければ価値がなくなってしまいます。

そこで、魚や肉を、とりあえず稲と交換しておこうという動きが出てきます。稲は長持ちしますし、食物として誰しもがほしがるものです。とりあえず稲に換えておけば、やがてほしいものが出てきたときに簡単に交換できるだろう、と考えたわけです。

こうして、日本では「稲」が物々交換の「仲立ち」を果たすようになりました。

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