ヤブ歯科医に騙されがちな人が見落とす盲点

逮捕続きの歯医者がなぜか「5つ星」の高評価

「ネット予約ができる。土日も受診できる。そして家から近い。この条件に合ったのが、あの歯科医院でした。どのサイトを調べても、悪い口コミは見当たりませんでした」

つまり、トラブル続きだった歯医者Aは、奇妙なことにネット上では「評判のいい歯医者」になっていたのだ。

その患者は、常識では考えられない治療を受けていた。

「(歯医者Aは)優しそうなニコニコしたおじさんでしたが、自分のペースでどんどん勝手に治療を進めていきました。”歯茎が腫れている”と言って、強烈な力でブラッシングをして”ほら血が出ているでしょう。もうちょっと遅かったら、取り返しがつかなかった”。そして、”噛み合わせにも問題がある”という理由で、7本の歯を削られたんです。治療費は約8000円。明細が記されていない、手書きの領収書を渡されました。心配になって、別の歯医者に診てもらったら、歯を削る必要などなかったそうです。(治療された部分の)違和感は今も残っていますし、精神的なダメージもあります」

「口コミ」はおカネで買える

患者は歯科関連の「予約サイト」や「口コミサイト」を見たと証言している。

調べてみると、事件発覚後に各業者は、自社サイトから歯医者Aの情報を消去していた。そこで、過去の掲載情報を追跡する方法を使ってみると、評価の大半が最高の「★★★★★=5つ星」で、ネガティブな投稿は、全く見当たらない。実際に掲載されていた、口コミを並べてみよう。

「先生が明るい方なので、相談がしやすく助かっています」
 「先生が優しかった」
 「とても親しみやすく落ち着けて治療が早いのでとても助かります」
 「早くて安い」
 「親切丁寧で雰囲気のいい歯医者さんです」

歯医者Aが起こした過去のトラブルや、今回3度にわたって逮捕された状況とは、あまりにも乖離した内容だ。そして誰にでも思いつくような、凡庸で一般的な言葉で埋め尽くされている。

歯医者の口コミをわざわざ投稿する動機は、良くも悪くも患者としての強い印象や体験がモチベーションになる。「先生が明るい、優しい、親しみやすい、親切丁寧」など、無難な表現だけしか並んでいない口コミは「ニセモノ」の可能性を疑うべきだ。

ニセモノの口コミには、ほかにも「批判的な内容が一切ない」「投稿の日付が、一定の時期に集中している」といった特徴がある。この3つの要素が揃っていると、その歯医者についての口コミの信ぴょう性は非常に低いと考えたほうがいいだろう。

ある歯医者を取材中に、「予約サイト」の営業マンが訪問して、オプションサービスを紹介する場面に遭遇したこともあった。

「毎月の契約料の中には、口コミの分も入っていますので、集患効果はバッチリです」

営業マンが口コミを約束する意味は、あえて説明しなくてもおわかりだと思う。

また、私が口コミを疑うもう一つの理由は、アルバイトの存在だ。ネットの仕事紹介サイト(クラウドソーシングサイト)には、歯科医院の口コミから、歯医者のブログ等にネット上で治療の相談をするというサクラまで、さまざまな仕事の依頼が掲載されている。一つの口コミ=200円前後の報酬が相場だ。調査の過程で、次のようなアルバイト募集を見つけた。

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