ミレニアル世代をつかむ欧米スポーツの戦略 スポンサーシップの真の価値はどこにある?

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現役時代はリバプールでも活躍した、現在サッカー指導者のガリー・マカリスター氏を起用した「オレンジエイド」の取り組み(写真:リバプールFC)

企業のCSR活動とプロスポーツを結びつけた「スポーツスポンサーシップ」にはどんな価値があるのだろうか?

以前公開した記事「欧州サッカー、知られざる胸スポンサー効果」(2017年10月14日配信)では、英プレミアリーグ・リバプールFCのメインスポンサーであるスタンダードチャータード銀行が、スポンサーシップを活用して彼らのCSR活動をプロモーションした事例を2つ紹介した。

1つは、ユニフォームの胸部分にプリントされた社名を年に1回「Seeing is Believing」のメッセージに置き換えることで、同銀行が視覚障害者支援を行っていることを世に発信するキャンペーン。もう1つは、同じようにユニフォームの胸の文字を「#GLOBALGOALS(グローバル・ゴールズ)」に置き換えて、世界のさまざまな社会問題に取り組む姿勢を表現するキャンペーンである。

スポーツスポンサーシップのメディア露出効果については先の記事ですでに触れているので詳細は割愛するが、胸のロゴを「Seeing is Believing」に置き換えたキャンペーンでは、その試合を機に50万ドルの寄付を集めることに成功。#GLOBALGOALSのキャンペーンにおいても、3700万人のサポーターにメッセージを届けることに成功している。スポーツを活用することにより、なかなかスポットライトを浴びる機会のなかったCSR活動に一気に注目が集まり、結果的にそれが同銀行のイメージアップにもつながった。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催決定以降、日本でもスポーツスポンサーシップへの関心が高まっているが、ビジネス的な価値ばかりが注目されているように感じる。もちろん、スポンサーシップそのものにビジネス的要素は欠かせないが、今回はその活用法を社会貢献的な切り口で掘り下げていきたい(なお、この記事でのスポーツスポンサーシップとは、パラスポーツ支援など「CSR活動としての競技支援」とは異なることをご理解いただきたい)。

スポーツチームとのタッグでCSR認知度倍増

リバプールFCにはほかにも興味深い取り組みがあるのでいくつかご紹介したい。プレミアリーグはシンガポールでも大変人気があり、リバプールFCの熱狂的なサポーターも多いことから、現地の保険会社NTUCインカムがリバプールFCのスポンサーシップに参入し、2015年から2年間パートナーシップを組んだ。

同社では、貧困家庭の教育支援などを行うCSR活動「オレンジエイド」を2010年より実施していたが、その活動自体の認知度が低いこと、それによってファンドレイジング(資金調達、狭義では寄付を指す)等の運営がうまく機能しないことが課題だった。

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