安倍3選を見越して作られた「骨太方針2018」 財政再建は5年先送りでポスト安倍の重荷に

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自民党総裁3選への道が近づきつつある安倍首相。それに合わせて財政再建目標などもすり寄っている(全国信用金庫大会であいさつする安倍首相。写真:ロイター/Issei Kato)

6月15日に「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2018」が閣議決定された。「骨太方針2018」にどう盛り込まれるか注目されていたものの1つは、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化の達成時期だった。結局、達成時期については、「2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す」と記された。2020年度に達成する予定だったから、5年先送りされたことになる。

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2025年度は、今から7年後。その時まで現政権が続いていることはないだろう。ならば、この財政健全化目標の達成に注力せず、あいまいに決めておけばよい、という政治力学が作用した面はある。ただ、将来の政権担当者の候補者にとってみれば、現政権でたくさんこしらえた政府の借金のツケを回されては、いざ政権を担うときに重荷になり、裁量の余地が狭まる。できれば、現政権で減らせるだけ借金は減らしておいてほしい。だから、財政健全化目標について手を抜いてもらっては困る。

そんな政治力学が、今回の「骨太方針2018」には働いたようである。現政権が続くことを前提にした時間・視野では、財政健全化目標に厳しく縛られたくないが、それを超えて将来的には政府の借金を膨らませないようにする。基礎的財政収支黒字化の達成時期を2025年度にした背景には、こうした事情が見え隠れする。

中間指標で置いた3つの数字とは

今年9月には、自民党総裁選がある。その総裁選で安倍晋三総裁が3選されれば、その任期は2021年度までとなり、現政権は2021年度までを視野に入れた政権運営となる。

「骨太方針2018」では、2019~2021年度を「基盤強化期間」と位置付け、経済成長と財政を持続可能にするための基盤固めを行うこととした。それは、2022年からは団塊世代が75歳に入り始め、社会保障関係費の急増が見込まれることと、2020~2021年度は75歳に入る高齢者の伸びが鈍化することを踏まえている。社会保障給付は、2022年度以降急増することが予想されるが、その前の時期はそれほど増えない。

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