安倍首相の狙いは「総裁選の消化試合化」だ なぜ国会の会期を大幅に延長したのか

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安倍首相は全国信用金庫大会でのあいさつで「日本がコロンビアに勝った!」で、大喝采を浴びた(写真:共同通信)

サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で日本代表が予想外に初戦勝利し、列島が沸き立つ中、政府与党は20日までの通常国会の会期を、7月22日まで32日間延長した。「もり・かけ疑惑」などでの野党側の追及に音(ね)を上げる安倍晋三首相は、当初半月程度の短期延長を望んでいたとされるが、最終的にはカジノ法案など重要法案を確実に成立させるため、1カ月超の大幅延長を決断した。 

その一方で、今回の大幅会期延長によって、9月の自民党総裁選での首相を含めた立候補予定者の正式出馬表明は、国会閉幕後の7月下旬以降となることが確実だ。首相サイドには9月中下旬に日程が立て込む首脳外交などを理由に、総裁選日程の繰り上げを検討する動きも出始めており、自民党内で「会期大幅延長を逆手に取って、総裁選を短期決戦とし、安倍外交を絡めて首相3選の消化試合にするしたたかな戦略」(参院幹部)との見方も広がる。

首相は先手必勝で7月23日に出馬表明?

通常国会の会期末を迎えた20日午前、首相(自民党総裁)は山口那津男公明党代表との与党党首会談で、参院で審議中の働き方改革法案の成立などのための会期延長を提起し、山口氏が「他の重要法案の成立も図りたい」と応じて1カ月超の会期延長で合意した。これを受けて同日午後の衆院本会議で、与党の賛成多数で32日間の会期延長を議決した。

政府与党が今国会での成立を期す各重要法案の処理状況をみると、カジノ(IR)実施法案は19日に衆院を通過したばかりで、参院選の「一票の格差」是正や合区対策としての定数「6増」のために自民党が国会提出した公職選挙法改正案は、参院での審議がまだ始まっていない。両法案に反対する立憲民主党など主要野党は徹底抗戦の構えで、通常国会の会期延長は1回しかできないことから、与党は「確実に成立させるための大幅延長」(参院自民幹部)を選択したわけだ。

ただ、32日間延長で新たな会期末となる7月22日は日曜日。「原則的に土日の審議は行わない」という国会の慣例を踏まえれば、実質的会期末は20日となる。衆院では複数の委員会が22日からの海外視察を予定しているため、大島理森衆院議長は自民党側に20日閉会を要請したが、自民党は会期末での野党側の抵抗などを理由に21、22両日を「予備日」とすることで押し切った。

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