「危ないブロック塀」が野放しになる深刻原因 死亡事故が繰り返し起きているのだが…

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ところが、法律が改正されても、それ以前に建てられたブロック塀は残り続ける。法改正と同時に、旧耐震基準に基づくブロック塀は、現行の規制に適合しない「既存不適格」となったが、増築や建て替えを行わないかぎり、そのまま放置していても違法にはならないのである。

加えて、住宅とは異なりブロック塀の築造には法令に適合しているかどうかの検査義務さえもない。結果として倒壊のおそれのあるブロック塀が改修・撤去されることはなく、1995年の阪神・淡路大震災や2005年の福岡西方沖地震、2016年の熊本地震でも倒壊したブロック塀が原因で死者が出ている。

今回、高槻市の小学校で倒壊したブロック塀は、高さ3.5メートルと新基準どころか旧基準に照らし合わせても明確な違反だったが、これまで違法性が指摘されることはなかった。

ブロック塀の寿命は20~30年に過ぎない

ブロック塀の築造に用いるブロックについても、課題がある。

業界団体の指針では分厚く強度の高いC種を用いるものとしているが、「安価で施工の容易さもあり、(園芸向けに使われる)A種やB種で築造された塀も存在する」(全国建築コンクリートブロック工業会)のが実情だ。薄くて軽いA種やB種は、それだけ地震の揺れにも弱くなるのだが、前述のように検査義務がないため、事前にはなかなか表面化しない。

倒壊のおそれのあるブロック塀は今も街にあふれている(記者撮影)

課題は、さらにある。実は、「新基準に適合しているから安全」と判断するのは早計だ。一度設置したブロックは風雨にさらされることで内部の鉄筋がさび付いて劣化が進む。

「モルタルを塗り替えるなどの定期的なメンテナンスをしていても、耐用年数はおおむね20~30年」(全国建築コンクリートブロック工業会)。たとえ劣化が進んでも、はた目では区別がしづらく、内部の鉄筋の状況などは特殊な機器を使わないと判別が難しい。

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