「発達障害」の29歳が引きこもりを脱せた理由 当事者同士のハラスメントに悩むことも

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小林まなみさん(左)とライフスタイリストの乃浬子さん(筆者撮影)
ひと昔前までは「独特でちょっと変わった人」「ミスが多くて困った人」と思われがちだった発達障害。しかし、最近ではNHKで発達障害特集が何度も組まれたり、「発達障害専門外来」を設けている精神科もあったりするほど、その名が浸透してきている。
発達障害を一言で説明すると「できること/できないことの差が大きい」障害だ。発達障害には、独自のマイルールがあったりコミュニケーションに問題があったりするASD(自閉スペクトラム症)、不注意や多動、衝動的な言動のあるADHD(注意欠陥・多動性障害)、知的な遅れはないのに読み書きや計算が困難なLD(学習障害)の主に3つがある。この3つの障害が混在して表れるケースも多い。
発達障害当事者を追うこのルポもいよいよ最終回。8月5日には本連載をベースにした拙著『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』の刊行が決まった。
最後にご紹介するのは、都内在住でASDの小林まなみさん(29歳・会社員)。引きこもり経験もある彼女だが、現在は引きこもりから脱し、障害者雇用でアパレル会社に勤務している。今回は小林さんがアパレル会社で働くきっかけとなった、ライフスタイリストの乃浬子さんと2人でインタビューに応じてもらった。

知的障害としてボーダーライン、精神障害で手帳取得

今まで取材してきた当事者には知的に問題はない人が多かった。なかには高学歴な方もおり、だからこそなぜ、自分はほかの人ができることができないのか悩むケースが見受けられたが、今回お話をうかがった小林さんには軽度の知的障害があるという、今までの取材のなかでは初めてのケースだ。

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小林さんは25歳の頃、発達障害ではないかと医師に疑われた際の知能検査で発覚した。小学5年生の頃の知能検査では健常者と知的障害者のボーダーラインだったため、当時の担任が保護者会で親に伝えるか悩んだ末、伝えなかったことがのちに判明したという。

「障害者雇用で就職をしようと、知的障害の手帳を取ろうとしたところ、当時の主治医には『君はボーダーラインだから、知的障害で手帳は取れないよ』と言われました。でも、保健師さんが熱心で、より手厚い制度を受けられる知的障害の手帳を取ろうと、母親の証言を求めてきました。しかし、母は証人になれないと言ってきました。そこで保健師さんは、私が子どもの頃のIQや成績を調べるために、当時の小学校の担任の先生を探してきてくれたんです。でもやっぱり、審査に通らなかったので、二次障害として併発していた精神障害のほうで手帳を取りました」(小林さん)

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